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長男嫁「このままじゃ絶対に不公平」
真由美さんは赤ワインを注ぎながら、少し声のトーンを落としていいます「あのね、健太。このままじゃ絶対に不公平よ。都会の8,000万円のマンションを義妹さんだけがもらえるなんて。せめて売却して半分ずつにするべきよ。4,000万円あれば、このアパートを出て一軒家を買うこともできるし、子どもたちの大学資金も確保できるでしょう」。
「でも、妹が住む場所は……」
「義妹さんだって38歳なのよ。前職の経験を活かして再就職もできるでしょう。いつまでも親の面倒をみつづけるつもりなの? もっと合理的に考えないと」真由美さんの目には打算的な光が宿っています「遺産分割は法律上、平等が原則でしょう? マンションだけで8,000万円、それを義妹さんだけがもらうなんて、法的にも問題になるわよ」。
健太さんはなんともいえない気持ちになりました。筋の通った妻の主張を理解はしつつも、どこか冷たさも感じてしまうのです。それに、このように話す妻のことを、家を失いかねない妹はおろか、両親もよく思わないだろうと思いました。まだ起きていない、しかし今後起きかねない妻と妹の争いを想像し、健太さんは頭を抱えました。
資産増は嬉しいことのはずが…家族の危機に
佐藤家の事例は、決して特別なケースではありません。今後、都市の不動産価値の上昇により、同様のケースは増えていくでしょう。「思いがけない資産価値の上昇」は表面上は朗報のようにみえても、実際には家族関係に緊張をもたらすことさえあります。
築20年超のマンションが8,000万円に——。資産が増えることで「幸せ」になるはずが、むしろ悩みが深まるという逆説。そんな状況に直面したとき、どのような選択肢があるでしょうか。
アドバイス1:早期に家族会議を開催すること
佐藤さんのケースでは、マンションの価値が上がったという「良い問題」が家族の仲を悪くする前に、早く行うべきことがあります。それは「家族全員で正直に話し合うこと」です。この家族会議では、守るべき大切なルールがいくつかあります。
まず、全員が参加することです。健太さん夫婦は北海道に住んでいるので、オンライン会議なども使って、必ず全員が参加できるようにしましょう。相続の話は「知らなかった」とあとから不満が出やすいものです。
次に、「気持ちとお金をわけて考える」ことです。美咲さんが親の面倒をみてくれていることへの感謝は大切ですが、だからといって8,000万円のマンションをそのままあげるというのは、家族のあいだに不満を生むかもしれません。「ありがとう」という気持ちと「財産をどうわけるか」は別々に考えるべきでしょう。
お金の専門家に相談したり、話し合った内容を書面にまとめたりすることも大事です。特に親の考えを「エンディングノート」のような形で残しておくと、子どもたちも親の本当の願いを理解しやすくなります。
