前回は法人化することによる財産の分散化、経費としての損金計上のやり方、役員の処遇などについて説明しました。今回は、高額所得のサラリーマンが所得税を軽減するための法人の使い方について解説します。

法人は「所得税」を軽減する方法としても使える

法人設立のメリットは、財産の分散や経費計上だけではありません。例えば、サラリーマンで年収が2000万円を超えてしまうような人は、収益不動産を所有する場合に、所得税を軽減する方法として法人を使うことも可能です。

 

仮に、所得税率が23%という人がいるとしましょう。こういう人は、住民税が10%加算されて33%になります。給与所得控除がありますが、控除後の所得に33%もの高い税率が適用されてくるわけです。

 

現在、法人の実効税率は約38%ですが、プライベートカンパニーのような中小企業の場合は平均的に考えて20%台が普通です。住民税が加算されて33%に達してしまうような人は、法人を設立してプライベートカンパニーを活用したほうが、収益不動産を所有する場合には節税効果があるはずです。

 

具体的には、おそらく年収600万円の人でも、ほかに事業所得があって青色申告特別控除を使いきっている人なら、法人に許される必要経費の幅が広いことを考えると得になるのではないでしょうか。

節税目的で利回りの低い物件を購入するのは本末転倒

これまでよく使われた収益不動産の節税方法というのは、サラリーマンが不動産の収益物件を購入して不動産所得を赤字にすることで、高い税率の給与所得から「損益通算」して所得税の還付を受ける方法でした。ところが、現在の法律では「不動産所得の赤字のうち、土地にかかる利息の部分は給与との損益通算ができない」ことになっています。

 

不動産所得の赤字のうち土地にかかる利息部分が給与と相殺できない、ということは、節税になるのは、不動産所得が経費の割合において少ない物件(利回りが低い物件)ということになり、少なくともサラリーマンのような給与所得者が使ったとしても、あまりメリットのない節税方法といってよいのかもしれません。ただ節税したいがために利回りの低い物件を購入するのは、本末転倒です。もちろん、プライベートカンパニーのような法人の場合には、土地の金利も損金として扱われます。

 

そう考えると、法人を設立して、専業主婦の奥さんを法人の社長などにする方法が一番理想的といってよいでしょう。とはいえ、奥さんの健康保険や年金納付といった社会保険費用などコストの問題もあります。

 

税理士の費用や報酬費用など法人のランニングコストもかかるために、損益に対するシミュレーションはきちんとしておくに越したことはありません。

本連載は、2013年8月2日刊行の書籍『相続税は不動産投資と法人化で減らす』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

相続税は不動産投資と法人化で減らす

相続税は不動産投資と法人化で減らす

成田 仁,富田 隆史

幻冬舎メディアコンサルティング

従来より相続税対策として考えられてきた、アパートや小規模ビルなどの建設。しかし、それこそがリスクをもたらしているかもしれないとした…。 本書は、持て余している土地を収益性の良い賃貸物件に買い替える不動産投資の最…

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