(※写真はイメージです/PIXTA)

配偶者の死は、老後の生活設計を根底から揺るがします。「遺族年金」への誤解による収入減と、孤独からくる支出増。この“二重苦”にはまり老後破綻した佐野さん(仮名)の事例から、実情とその問題の対策を探ります。

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亡妻の年金支給が途絶えた理由

このような結果になったのは、遺族厚生年金の支給ルールが関係しています。故人の老齢厚生年金の4分の3がひとつの基準ですが、受給者自身の老齢厚生年金額がそれを超える場合、差額分しか支給されないのです。将之さんの場合、自身の年金額が芳子さんの遺族厚生年金を上回っていたため、結果として受給資格がありませんでした。

 

保険外交員も、将之さん夫妻の年金状況を正確に把握しないまま、受給可能かのような説明をしてしまっていたようです。加えて、将之さん自身も大きな誤解をしており、芳子さんが受け取っていた年金総額(基礎年金部分も含む)の4分の3が手に入ると考えていました。

 

遺族年金制度の複雑さは広く知られておらず、社会全体での理解促進が求められています。年金制度に関する厚生労働省の意識調査によれば、遺族年金の受給資格や具体的な支給額に関して、誤った情報や認識を持つ人が少なくない実態が浮き彫りになっています。とりわけ、自身の老齢厚生年金との受給調整ルールは難解とされ、将之さんのような誤解が生じるのは稀なケースではないといえるでしょう。

孤独が生んだ“誤算”

さらに不幸が重なります。芳子さん亡きあと、自分1人のためだけに食事を作ることが億劫になってしまい、食生活を外食や市販の惣菜に全面的に依存するように。人恋しさも手伝って、行きつけの飲食店への足取りも以前より頻繁になりました。

 

そして、誰もいない自宅へ帰る寂寥感からか、夜更けに煌々と光るコンビニの灯りを見つけると無性に立ち寄りたくなり、不要な酒類や菓子類を買い込むといった行動が習慣化してしまいました。

 

一つひとつの消費は些細でも、積み重なれば家計を圧迫します。最終的に、2人で生活していた時代よりもかえって支出がかさみ、月々15万円ほどの年金収入ではまったく追いつかず、毎月10万円もの不足が生じるという危機的な状況に陥りました。

 

将之さんのように、伴侶を失ったあと、生活費が増加するケースは決して少なくありません。総務省の家計調査報告が示すところによると、高齢単身世帯における平均消費支出は、2人以上世帯の一人当たり支出額の単純な半減とはならず、むしろ外食費や娯楽・交際関連費が増える傾向にあります。背景には、家事負担の増加に伴う外部サービスの活用や、孤独感を埋めるための対人交流の活発化などがあると推察されます。

 

追い打ちをかけるように自宅のリフォーム費用も発生し、芳子さんの死からわずか4年の歳月で、夫婦で懸命に蓄えた財産は完全に枯渇してしまったのです。

 

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