「退職したら、必ず行こう」20年越しの約束
「若いころからの約束だったんです。退職したら、ヨーロッパを船で回ろうって」
そう話すのは、関東在住の元会社員・長谷川さん夫妻(仮名・ともに66歳)です。夫はメーカー勤務を定年まで勤め上げ、退職金と貯蓄を合わせた金融資産は約2,500万円。住宅ローンは完済済み、子どもは独立しています。
「飛行機での周遊より、ゆったり船で回りたかった。体力があるうちにしかできない贅沢だと思いました」
選んだのは、ヨーロッパを巡る約3週間の豪華客船クルーズ。ビジネスクラスの航空券、船室のグレードアップ、寄港地ツアーを含め、夫婦での総額は約480万円でした。
「高いとは思いましたが、“今しかできない”と思って決断しました」
旅そのものは、まさに理想通りでした。
「毎日景色が変わって、食事もイベントも充実していて。非日常の連続でした」
しかし、帰国後にクレジットカードの明細を見て、少し言葉を失ったといいます。
「船内の追加オプション、チップ、現地ツアーの追加申込み、Wi-Fi利用料……想定より100万円近く多くなっていました」
豪華旅行では、「基本料金+現地追加費用」で総額が膨らみやすい構造があります。
「楽しかったんですが、“ちょっと使いすぎたかな”という気持ちは正直ありました」
総務省『家計調査(2024年)』によると、高齢夫婦のみの無職世帯では、月の実収入が約22万円台に対し、消費支出は約25万円台となっており、平均で毎月数万円の赤字が生じている構造が示されています。
つまり、多くの世帯が「貯蓄の取り崩し」を前提に生活しているのが実態です。長谷川さん夫妻も例外ではありません。
「年金は夫婦で月23万円ほどです。旅行前は“十分足りる”と思っていました」
