夢の注文住宅が家計を苦しめる重荷に
「結婚式まで諦めて建てたんですけどね。こんな思いをしてまで建てる必要あったのかな……って毎日考えてしまいます」
深いため息をつきながらそう切り出した若菜さん(仮名・34歳)。彼女は事務職として働き年収350万円、夫の誠司さん(仮名・37歳)は中堅メーカー勤務で年収は500万円。世帯年収は850万円で、4歳と0歳の子供を持つこの4人家族は、一見すると順風満帆な共働き世帯に見えます。
二人が手に入れたのは、土地と建物を合わせて総額6,500万円を投じた庭付き3LDKの注文住宅でした。結婚式を諦めてコツコツ貯めた500万円を頭金に充て、残りの6,000万円をローンで契約。夫が3,500万円、私が2,500万円というペアローンの内訳は、二人の合算年収で借りられる限界ギリギリの額でした。
月々17万円という返済は、当時の二人には「共働きなら返せる」と思える数字でした。しかし、下の子の出産を経て若菜さんが時短勤務になったことで、家計の余白は一気に消滅。
かつてのように貯金に回す余裕はなくなり、日々の生活を回すだけで精一杯という現実に、若菜さんは強いストレスを感じています。
「こだわりの間取り」が夫婦関係の悪化を招く事態に
何より若菜さんを苦しめているのは、こだわりを優先して自分たちで作り上げたはずの間取りでした。
「広い芝生の庭に憧れて、建物よりも庭の面積を優先させたんです。その結果、1階のLDKは14畳ほどしか取れず、4人家族には明らかに手狭でした。リビングは常に子供の物であふれ、くつろぐスペースもありません」
さらに、将来の家族設計の甘さも露呈しました。「実は、子供が二人になることをしっかり想定できていなかったんです。子供部屋は将来仕切る前提の広い1部屋にしました。でも、下の子が生まれた今、実際に仕切ると一人分が極端に狭くなることがわかって。キッチンから水回りまでの動線も悪く、図面を考えていたころの自分を責めたくなります」
誠司さんに不満を漏らしても、「元はといえば、君がこの間取りがいいといったんだろ」と冷たく突き放すだけです。誠司さんもまた、小遣いを削られ、残業を繰り返す日々に疲れ果てていました。せっかく家族のために建てた家なのに、今ではリビングに重苦しい沈黙が流れることも珍しくありません。
「以前は庭でティータイムを夫婦で楽しむのが夢でした」と語る若菜さん。しかし現実は厳しく、窓の外に広がる庭を眺めるたびに、「あんなに無理をしてまで手に入れる必要があったのか」という後悔が込み上げてくるといいます。
将来への不安に押しつぶされそうな今、若菜さんの口から漏れたのは、理想とは程遠い本音でした。
「こんなに先が見えなくて苦しいなら、もっと安く中古の家を買って、家族と気楽に暮らせばよかったです」
データで見る「金利上昇への焦燥」
住宅金融支援機構が発表した「住宅ローン利用者の実態調査」によると、今後1年間の住宅ローン金利の見通しについて、65.7%が「現状よりも上昇する」と回答しており、金利上昇への警戒感は高まっています。また、物価上昇や住宅価格高騰を受けて、22.8%が「予算を増やした(住宅ローンを増やした)」と答えています。
金利上昇への不安を抱えながらも、焦りから借入額を増やしてしまう。若菜さんのように「理想の家」がストレス源にならないためには、銀行の融資枠に頼りきるのではなく、将来の家計にどれだけ「余白」を残せるかが、後悔しない家づくりの条件といえるでしょう。
[参考資料]
• 住宅金融支援機構「住宅ローン利用者調査(2025年4月調査)」
