関税ショックで不信感が高まるトランプ政権。ドル高・円安展開の継続も自ずと限界か…6月の米ドル/円は139~147円「米ドル安・円高」余地拡大の予想【国際金融アナリストが解説】

6月の「FX投資戦略」ポイント

関税ショックで不信感が高まるトランプ政権。ドル高・円安展開の継続も自ずと限界か…6月の米ドル/円は139~147円「米ドル安・円高」余地拡大の予想【国際金融アナリストが解説】
(※画像はイメージです/PIXTA)

先月のドル/円は、一時的な米ドル高・円安の場面はありつつも、関税ショックによる対米投資見直しなどの動きから、それが継続的な展開になることはありませんでした。今月も、米財政リスクや日銀追加利上げ観測などをきっかけに「米ドル安・円高」余地が拡大する可能性がありそうです。今月のドル/円予想について、マネックス証券チーフFXコンサルタント・吉田恒氏が詳しく解説します。

6月の注目点…米財政リスク、日銀追加利上げ観測の再燃

トランプ減税で再燃する米財政リスク

関税政策の発表をきっかけにトランプ大統領の政策に対する不信感が急拡大し、それがすでに見てきたように対米投資の見直しの本格化をもたらしたならその流れは簡単には変わらず、それは米ドルの上値を抑制する要因となりそうです。それに加えて5月に注目が高まったのは、トランプ大統領の経済政策のもう1つの目玉である減税を巡る財政赤字拡大への懸念でしょう。

 

トランプ政権1期目においても、2017年12月の減税法案の議会成立後間もなく、米金利上昇に伴う金利差の拡大を尻目に米ドルが急落に向かう「悪い金利上昇」局面が2ヵ月以上も続きました(図表3参照)。6月も減税法案の議会審議などをにらみながら、米財政赤字拡大への懸念が株、債券、米ドルの「トリプル安」を再燃させるリスクは引き続き要注意ではないでしょうか。

 

出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成
[図表3]米ドル/円と日米10年債利回り差(2016~2020年) 出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

 

再浮上する日銀追加利上げ観測

6月は中旬に日米の金融政策を決める会合が予定されています。このなかでとくに日銀の金融政策については、「関税ショック」をきっかけとした金融市場の不安定化のなかで一時後退していた追加利上げの可能性が、金融市場の安定化を受けて再浮上してきたのではないでしょうか。

 

日銀の金融政策を織り込む2年債利回りは3月にかけて0.9%近くまで上昇、現行0.5%の政策金利をさらに0.25%×2回、つまり1%への引き上げを織り込む動きとなりました。その後「関税ショック」を受けて、2年債利回りは大きく低下、追加利上げの織り込みはほぼ消滅しましたが、最近にかけて再び0.75%程度まで上昇、0.25%の1回の追加利上げを再び織り込んだようになりました(図表4参照)。このような日銀の追加利上げ見通しは、金利差縮小を通じ円買い要因になりそうです。

 

出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成
[図表4]日本の2年債および10年債利回り推移(2025年1月~) 出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

 

6月米ドル/円予想レンジは139~147円

これまで見てきたように、トランプ大統領の政策への不信感などから、この6月も米ドル高・円安の継続的な展開には自ずと限界がありそうです。一方で米財政赤字拡大懸念の米ドル売りや、日銀追加利上げ見通しに伴う円買いが拡大する可能性はあるでしょう。以上を踏まえ、6月の米ドル/円は139~147円で予想したいと思います。

 

6/2~6/6の米ドル/円予想レンジ=140~146円

6月第1週は、米雇用統計など注目度の高い5月の米経済指標の発表が始まります。すでに見てきたように、米景気については一時のスタグフレーションなどの懸念がやや和らいでいますが、それを実際の数字で確認することになります。金融政策関連では5日にECB(欧州中央銀行)の金融政策発表などが予定されています。

 

ほかでは先週の関税政策差し止めを巡るトランプ政権と米裁判所のやり取りや、米財政リスクを取り巻く問題が引き続き注目を集めることになりそうです。

 

こういったなかで、米ドル/円は突発的なニュースをきっかけに上昇することはあっても、それが継続的に展開することは限られ、一方でテクニカルな分岐点である142円台を割り込んだ場合は下落余地が拡大する可能性があるとの考え方から、予想レンジは140~146円で想定したいと思います。

 

 

吉田 恒

マネックス証券

チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長

 

※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

 

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