ハワイは憧れから「今、少しだけでも体験してみる」場所へと変化
もちろん、現実的な課題も無視できません。たとえば、アメリカの医療制度はご存じの通り非常に高額で複雑であり、ハワイ滞在中の医療費も例外ではありません。そのため、海外旅行保険への加入は実質的に“必須”と言えるでしょう。
また、アメリカでは「プライマリケア医(Primary Care Physician)」、いわゆるかかりつけ医の概念が医療の基本となっています。外国人滞在者の場合、この“かかりつけ医”がいないため、軽い症状であっても、Urgent CareやEmergency Room(救急外来)といった高コストな医療機関を利用せざるを得ないケースが少なくありません。
結果として、ただでさえ高額な医療費に、さらに費用が上乗せされることもあり、安心して長期滞在するためには事前の医療準備が欠かせません。
また、気になる時差についてですが、日本とハワイの時差は19時間で、日本の方が19時間進んでいます。一見すると「そんなに時差があるなんて、ハワイから日本へ移って仕事するのは無理なのでは?」と思われがちですが、実際に生活してみると、感覚的には「ハワイが5時間進んでいる」というような捉え方もできるため(日付は1日遅れ)、意外と不便さを感じないという声も多く聞かれます。
とはいえ、日本の業務開始時間はハワイではお昼過ぎにあたるため、仕事内容によってはハワイの夜遅くまで働かなければならないケースもあるでしょう。
一方で、「ハワイのゆったりとした生活が、ビジネスシーンでは物足りなかった」と語り、1年足らずでアメリカ本土に戻った知人の話も私の周りではちらほら耳にします。それもそのはず、ハワイの本質的な魅力は、“心と体がゆるむ日常”を与えてくれる空間としての心地よさにこそあるからです。
だからこそ、自分が今、人生のどのフェーズにいて、何を大切にしたいかによって、ハワイ移住の向き・不向きが大きく変わってくるのかもしれません。
確かに、ハワイは物価が高く、生活コストも決して安くはありません。南国ならではの不便さを感じる場面もあります。それでもなお、多くの人がハワイに憧れ、実際に住んでみるという選択をするのは、この地にしかない代えのきかない価値があるからでしょう。
働き方も住まいの概念も大きく変化している今、ハワイはもはや「いつか叶えたい夢」ではなく、「今、少しだけでも体験してみる」場所へと変わりつつあります。そんな柔軟な選択が、これからのライフスタイルのスタンダードになっていくのかもしれません。
栗原 なな
株式会社Crossover International
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