〝相手の課題〞という考え方
これは相手が若者に限った話ではありませんが、たとえばあなたが、職場で「ちょっといいこと」をしたとしましょう。
満杯になったゴミ箱のゴミ袋を交換したり、プリンターに紙を補充したり、乱雑になっている共有の棚を整理したり、給湯室のキッチン用品を片づけたり。でも誰からもお礼を言われなかったとき、内心がっかりしたことはありませんか?
「忙しいなか、せっかくやったのに、誰にも褒めてもらえなかったな……」
ここでもアドラーの考え方が参考になります。アドラーはこのような「見返りを求める行為」を否定しています。
「職場を快適にしたい!」というのは、あなたの気持ちであり、いわば〝あなたの課題〞です。あなたがどれだけ「〜をして、職場を快適にしてあげた」と感じていても、相手がそれをどう感じているかは相手次第。つまり〝相手の課題〞なのです。
アドラーは次のように述べています。
「馬を水飲み場へ連れて行くことはできる。しかし、馬に水を飲ませることはできない」
(引用:和田秀樹『アドラー100の言葉』宝島社)
この言葉は「あなたの力で変えられるのは、あなただけ」と教えてくれています。
「とはいえ、やっぱり褒めてほしいのが人情ってもんでしょ」
そう思ってしまう方にお勧めしたいのは「褒められること」を目的にしない生き方です。代わりに「自分は貢献している」という喜びを強く実感してみてください。
それも誰かに褒めてもらって貢献したことを実感しちゃいけませんよ。「貢献できた」という事実に、自発的に喜びを感じるんです。そう、自分一人の心のなかで。それができれば、「褒められたい」という欲求なんて一瞬で手放せますよ。
「褒められる」というのは「自分がどう思われているか」を気にし続ける状態と言い換えられます。いわば他人軸の評価を追い求めている状態です。アドラーはそんな状態を〝他人の目の奴隷〞と形容し、そうならぬように警鐘を鳴らしてくれています。
たしかに「褒めてほしい」と思いながら頑張り続ける生き方って、奴隷のように苦しいですよね。自分がどれだけ頑張って相手を喜ばせようと努力しても、まったく報われない。そんな事態はいくらでも起こり得ます。それを恨んでも、なんにもなりません。
たとえば2024年1月、私は日本大学の常務理事を退任しました。日大からは「一身上の都合」と発表されましたが、内情を明かすと、林真理子理事長に辞任を迫られた結果です。「学部長会議での和田先生の発言をめぐり、学部長たちがいろいろうるさい」と林理事長に言われ、「林理事長が仕事やりにくいんだったら」と私が辞表を書いたわけです。
林理事長とは20年来の親交ですし、日大への愛や期待があったから常務理事という職をお受けしました。ですが、私が職にとどまると日大の改革が進まないため、辞任を決めたんです。
つまり「日大への献身」「林理事長の力になること」というのが私の課題だったわけですが「和田秀樹の進退」は林理事長サイドの課題です。
私の退任は、両者の課題が一致しなくなった結果です。それを恨んでも仕方がありません。それではたんなる私憤ですよね。私がすべきことは、ことの顚末を活字にして、日大がよりよくなるよう広く社会に知らしめること、と考えるようにしています。
実際、同年7月には『さらば日大! ―私をクビにした日本最大の学校組織の闇―』(ブックマン社)を上梓しました。私憤を公憤へと昇華できたと自負しています。
このようにいくら頑張っても、相手に好かれない(褒められない)という事態は起こり得ます。そんなとき「課題の分離」という考え方が、心を守ってくれるのです。
和田秀樹
精神科医
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