「なんとしてもお金が必要な人」は我慢するのも得策
定年後の高齢者にとって、働き方は大きく2つのタイプに分かれます。まずは、「子どもの教育費やローンの支払いがまだあるから、会社に残り(定年延長、再雇用)、少しでも年収を維持したい」という働き方です。
そんな方は、できるだけストレスなく組織を軽やかに生き抜いてください。たとえ年収が300万円に減ったとしても、十分ご立派です。そこで働くことが最適解なのですから、魂を売ってでも、そこにとどまるのが賢明です。
職場を〝監獄〞と割り切って、お金のために担々と働くのは悪い考えではありません。下手に転職して不安定な仕事に挑むより、安定した収入を確保するほうが大事なのです。
ただし、教育費やローンは仕方がないとしても、自家用車を保有している場合、車は手放し、公共交通機関を利用することで支出を削減するなどの調整は必要かもしれません。
一方で、今の職場を離れる手もありますが、年収を上げることはもちろん、維持することも簡単ではありません。
高齢者が新たに始められる年収の高い仕事として、たとえばコンビニの店長や道路工事などの肉体労働が考えられます。しかし、60代の方にとっては体力的に相当厳しいはず。ムリをすると健康を損なう危険もあります。
道路工事で試算してみましょう。仮に週5日、日給2万円で働くとします。1年を365日、そのうち土曜・日曜を104日、祝日を16日としましょう。稼働できる日数は245日です(365日‐104日‐16日=245日)。そして年収を単純計算すると490万円になります(245日×日給20,000円=490万円)。
「1日2万円」という高待遇なんて、そうそう見つからない破格の報酬です。皆さんはこの試算をどう捉えますか?
そして、学費もローンも全部払い終えた方にお勧めしたいのが、年収100万〜200万円、月収換算で10万〜15万円というライン。「年金に担保される生活なのだから、好きな仕事で稼ごう」という働き方です。
たとえば、自宅を少し改装して小さな喫茶店を開いたり、趣味を生かしたライター業などで収入を得る道です。在宅ワークなど、体力に負担の少ない仕事も多数あります。得意なことを極めれば、年収100万〜200万円のラインなんて軽々と超えられる可能性もありますよ。
「自営業や起業もいいけれど、やっぱり安定した職に就きたい」
そんな方への私のイチオシは介護職です。介護業界は人手不足が深刻ですし、力仕事に強い男性の介護職員は重宝されます。月収は20万円台で、年収300万〜400万円台。社会貢献ができて、「感謝される」仕事ですから、精神的な喜びが大きいのです。
和田秀樹
精神科医
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