なぜ、米国債入札日の米国債市場は「おとなしい」のか
これが主たる要因かどうかはわかりませんが、最近の米国債市場で話題になっているのは、米連邦準備制度理事会(The Federal Reserve Board of Governors, FRB)の証券ポートフォリオを管理・運用するニューヨーク連銀(Federal Reserve Bank of New York, FRB)が米国債の入札において落札する金額が増えている(そして、毎回の発行金額に占めるニューヨーク連銀の買い入れシェアも高まっている)という点です。これは一部では「ステルスQE(量的金融緩和)」と呼ばれています。
[図表3]は米国30年債と3年債の入札におけるニューヨーク連銀(FRB)による落札金額をみたものです。
そして、図表4は米国30年債と3年債の入札の発行金額に占めるニューヨーク連銀(FRB)のシェアをみたものです。
ちなみにここで30年債と3年債を取り上げた理由は、ニューヨーク連銀(FRB)が長期債だけを支えているのか、イールドカーブ全体を支えているのかを確認するためです。ニューヨーク連銀(FRB)のシェアをみると、同銀は短期債でも長期債でも同じだけ介入していることがわかります。
図表4をみると、ニューヨーク連銀(FRB)はQT(量的引き締め)を開始した2022年6月以降も(利上げを打ち止めする2023年7月の翌月の入札まで)入札での「関与」(買い入れ)を続けます。
それ以降、2024年の前半にかけては入札時の落札金額・シェアともに減少・低下します。その一方で、2024年の後半以降は徐々に入札時の落札金額・シェアともに増加・上昇します。
以上を確認すると、この間、ニューヨーク連銀(FRB)は、(1)QT(量的引き締め)で米国債の保有金額を縮小し、(2)セカンダリー市場(流通市場)で市中のディーラーから買い付けるグロスの買い入れ金額もごく少額に留まっていた一方で、(3)財務省による米国債の入札時、すなわち、プライマリー市場(発行市場)においては落札金額(買い入れ金額)を増やしていたということです。
その要因は不明ですが、ニューヨーク連銀(FRB)によるこうした動きは、「債務残高が増え、しかも今年は多額の借り換えが予定されているなかで、米国債の需給悪化が表面化することを避けるための手立て」であるとも思えます。
日本にとっては「いつか来た道」であり、「明日は我が身」かもしれません。
重見 吉徳
フィデリティ・インスティテュート
首席研究員/マクロストラテジスト
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![[図表3]米国債入札におけるニューヨーク連銀の落札金額](https://ggo.ismcdn.jp/mwimgs/f/4/540/img_f418abc6f086504b4ff7aa0e467ba36d158803.png)
![[図表4]米国債入札におけるニューヨーク連銀の落札シェア](https://ggo.ismcdn.jp/mwimgs/d/1/540/img_d1eb5156af3af45bcee131d42ac7522f157624.png)