自分を「虐待、侮辱」した息子に死後、「遺産」を譲りたくない…そんなとき“遺留分”の<相続権>を奪うことは可能か【遺書の効力についてFPが解説】

自分を「虐待、侮辱」した息子に死後、「遺産」を譲りたくない…そんなとき“遺留分”の<相続権>を奪うことは可能か【遺書の効力についてFPが解説】
(※画像はイメージです/PIXTA)

「自分にだけは関係ないと思っていた」遺産相続で想定外のトラブルを抱える方たちが、そう口にすることは少なくありません。少子高齢化が進み、遺産相続が身近な問題となるなか、遺言の法的効力について今一度確認しましょう。たとえば、病床の自分を「虐待、侮辱」した息子に死後、「遺産」を譲りたくない…と考える、終末期を過ごす人物がいるとします。推定相続人である子どもから、遺留分の相続権を遺言で無効化することはできるでしょうか。明海大学などで講師を務めた杉村政昭氏の著書『もめない遺産相続、失敗しない遺言』(ワニブックスPLUS新書)より一部抜粋・再編集し、詳しく解説します。

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3.身分上の事項

(8)認知― 非嫡出子*⁷について、父親が「この子*⁸は自分の子である」と認めることを認知といいます。認知により父親と非嫡出子の法律上の親子関係が生じます。認知は生前にすることもできますが、遺言でもすることができます。

 

(9)未成年後見人*⁹、未成年後見監督人*¹⁰の指定―未成年に対して親権を行う者がいなくなってしまった場合、その未成年者について未成年後見人が選任されますが、その指定をすることができます。未成年後見人の指定は遺言でのみなしうる行為です。

4.遺言執行*¹¹に関する事項

(10)遺言執行者*¹²の指定、または第三者への指定の委託―遺言の内容を実現するために一定の行為を必要とするものがありますが、これを行う職務権限をもつ者のことを遺言執行者といいます。遺言執行者は遺言で指定、または第三者への指定の委託がされていない場
合には、利害関係人*¹³の申し立てによって家庭裁判所で選任されます。

 

(11)特別受益の持ち戻しの免除―
遺贈*¹⁴や生前贈与をした場合に、それを考慮して法定相続分*¹⁵が修正されますが、遺言で遺贈や生前贈与したものを相続財産に算入しない意思表示をすることができます。

 

(12)祭祀*¹⁶を主宰すべき者の指定―
相続財産とは別に、系譜*¹⁷、祭具*¹⁸、墳墓の所有権については、祖先の祭祀を主宰すべき者が承継します。その承継者については遺言によっても指定することができます。

 

 

*7 非嫡出子……婚姻関係にない男女のあいだに生まれた子(嫡出子は婚姻関係にある夫婦のあいだに生まれた子)

*8 子……被相続人の子であれば、実子か養子か嫡出子か非嫡出子かにかかわらず、すべて相続人となる

*9 未成年後見人……未成年者(未成年被後見人)の法定代理人

*10未成年後見監督人……後見人が未成年者に対してきちんと財産管理や身上監護等を行っているのかを監督する者

*11 遺言執行……遺言者が死亡した場合、遺言の内容を実現するための手続のこと

*12 遺言執行者……相続財産の管理そのほか遺言執行に必要な一切の行為をなす権利義務を有する者のこと※

*13 利害関係人……相続財産の帰属について、法律上の利害関係を有する者

*14 遺贈……遺言により、特定の財産または財産の一定割合を、特定の相続人または特定の人に与えること

*15 法定相続分……民法で定められた法定相続人が受け取る相続財産の分割のこと

*16 祭祀……神や先祖をお祭りする儀式※

*17 系譜……先祖から子孫に至る一族代々の繫がり。師弟関係などの繫がり。また、それを書き表した図や記録

*18 祭具……庭内神し(屋敷内にある神の社や祠等といった神体を祀り日常礼拝の用に供しているもの)、神棚、神体、神具、仏壇、位牌、仏像、仏具、古墳等で日常礼拝の用に供しているものをいう。商品、骨董品または投資の対象として所有するものはこれに含まれない

 

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次ページ実際の遺言の書き方

※本連載は、杉村政昭氏の著書『もめない遺産相続、失敗しない遺言』(ワニブックスPLUS新書)より一部を抜粋・再編集したものです。

もめない遺産相続、失敗しない遺言

もめない遺産相続、失敗しない遺言

杉村 政昭

ワニブックスPLUS新書

元三井信託銀行の主席財産コンサルタントで、現在もカルチャーセンターなどで、遺産相続や遺言書の書き方などの人気講師を務める著者が、実例に即したQ&A形式で、深刻なトラブルを回避する遺産相続の方法と遺言の残し方を伝授…

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