「中学受験が早生まれに不利」というデータを読み解く
小学校受験と違い、一切の考慮がなくなるのが中学受験です。
中学受験は第一志望に合格できるのは多くて3割、実は1割などといわれるただでさえ厳しいものです。受験問題の難易度も高く、「子どもの発達と、受験問題の乖離が一番大きい受験」などともいわれます。
中学受験に関しては、 「早生まれは不利」だといわれています。
どのくらい不利なのかを、手持ちの数字で確認してみました。東京大学に多数の合格者を出すある中高一貫の男子校(男子校A)のある1クラスの中学入学者(34人)の数字を使っています。「4月2日~6月(遅生まれ・春)」「7~9月(遅生まれ・夏)」「10~12月(遅生まれ・冬)」「1月~4月1日(早生まれ)」の4つに分けて計算します。「遅生まれ・春」を「1」としたとき、「遅生まれ・夏」「遅生まれ・冬」「早生まれ」の合格者の割合はどのくらいになるのでしょうか。ちなみにこの数字は、同年の各月の実際の出生人数から割合を算出し、生まれ月による人数の差を補正しています。
すると、次のような結果になりました(小数点第2位以下を四捨五入)。
遅生まれ・夏 1.6
遅生まれ・冬 0.8
早生まれ 0.1
この年の「男子校A」の中学からの入学者は、「遅生まれ・春」を1とすると、「早生まれ」は0.1。つまり、十分の一に落ち込んでしまっているのです。これは私自身としても、かなりショックな結果でした。母数が少なく、正式な研究ではないにしてもインパクトのある数字であることは間違いありません。ただ、面白いと思うのは、一概に月齢がプラスの子のほうが有利というわけではなさそうなことです。もしそうなのであれば、「遅生まれ・春」が一番高い数字となるはずです。しかし、今回の数字ではそうは出ませんでした。
とはいえこのデータでは、早生まれ男子の中学受験はなかなか厳しいというものでした。
勝負のときは、中学受験ではないかもしれない
もう少し大きいデータで確認をしておきましょう。
川口大司教授の「誕生日と学業成績・最終学歴(*1)」は、「国際数学・理科教育動向調査(TIMSS*2)」と「OECD生徒の学習到達度調査(PISA*3)」のデータを使用しています。
この論文にある「生まれ月ヒストグラム」を見てみましょう。
「公立の中学(公立)」と「国公立・私立中学(国私立)」への在籍者の分布を棒グラフの形で示したものです。受験がない公立中で、男女ともにほとんど同じ割合の生徒が在籍しているのとは違い、受験が必要な「国私立」においては、早生まれの生徒の割合が低いことがわかります。中学受験において、早生まれが不利であることが、この論文からもわかります。
また、この論文の中で川口氏は、「女子よりも男子のサンプルにおいて、相対年齢が学業成績に与える影響はより強く推定される傾向が見られた」としています。
早生まれ族の中学受験は、なかなか厳しいということが、この統計を見ていくとわかってきます。これは紛れもない事実のようです。早生まれの子ども、息子を持つ親の一人としては、正直このような結果には目をつむりたくもなります。
しかし、事実を理解したうえでの受験と、理解しないままでの受験では、その結果は大きく異なるはずです。ここでは、早生まれの中学受験への効果的な取り組み方をご紹介していきます。
