幼少期に褒めるだけで早生まれの不利は9割解決する
ここからは早生まれの人、「早生まれ族」が持つ可能性について考えていきます。どのようにしたら、その能力を伸ばすことができるのか。「早生まれ族の中の賢人」は、いかにしてその能力を伸ばしてきたのか。一緒に考えていきましょう。
「ステレオタイプの脅威」をうまく排除されて育ってきた早生まれの人と、それを抱えたまま育ってきた人では、成績や仕事におけるパフォーマンスが違ってくるはずだと考えています。
ステレオタイプの脅威は、自己肯定感に大きく関わります。
「女性だから数学が苦手」というステレオタイプは、実際にその試験結果を下げるように、「自分に対する不当な自分自身の評価(低い自己肯定感) 」は、その人が持っている能力を実際に下げてしまうのです。
成績がいい子どもは自己肯定感も高い
自分のことを大切だと思える「自己肯定感」や、頑張ることで自分は何かを達成できると考える「自己効力感」の高さは、学力向上の大きな要因です。いくつもの研究で示されているこの結果は、「人間の能力は、自己肯定感(以下、自己効力感も含む)によって左右される」ということを示しています。
早生まれの子に、高い自己肯定感を持たせることができれば、早生まれの子が持つアドバンテージを発揮できるようになるはずです。
私は、年子がそのいい例だと考えています。
年子はある意味、生まれの月のギャップに関しては、遅生まれと早生まれの状況とほぼ同じです。
年子の下の子は優秀になりやすい?
年子の下の子は、たいてい兄や姉と一緒に育ちます。ある年子の方は、「双子みたいに育って、年が違うという感覚がなかった。何でも一緒にやっていた」といいます。
姉と年子だというある男性は、幼い頃から姉と競うように勉強をしてきたそうです。姉が習っている単元を一緒に勉強するので、勉強は常に先取り。姉が小学校に入学し、教科書を読んでいたときにはうらやましくて、一緒に読んでいたそうです。そんな形で自然と勉強をしていたその男性は、現役で東京大学に合格しています。
実は年子の下の子で、東大にストレートで入ったという方はこの方だけではありません。私の周りだけでもちらほらいるのですから、調べてみたらかなりの人数がいるのではないかと思います。
この年子の下の子の成功には、いくつかの理由がありそうです。
1 脳が若いうちに、学びの刺激を受ける
2 先取りで学んでいるために、成績が良くなる→自己肯定感アップ
3 親に褒められる→自己肯定感アップ
早生まれの子と年子の違いは、2と3。年子の子が自分の学年で有利な形でスタートできることと違い、早生まれはその状況にありません。年子の下の子は、何でも上の子と一緒にすることで、「小さいのにえらいね」と、周りから褒めてもらえます。
これが自然と自己肯定感を高めると考えられるのです。
早生まれは「先取り」していると認識する
2は、状況ですので変えられませんが、3は親の努力で変えることができます。自己肯定感を上げる、少なくとも下げないようにすればいいのです。ある小学校の先生は、「親が、子どもが早生まれであることを気にかけている場合、学校生活で心配な面が見られることはない」としています。早生まれという状況を、親がしっかりと理解していることがすでに、子どもの育ちを助けているのかもしれません。
勉強だけでなく、スポーツ選手でも、「兄・姉と一緒に始めて、弟・妹が活躍する」ということはよくあるものです。これは、早期にスタートできるというだけでなく、負けずに頑張る、周りから褒められるという環境に要因があるのではないかと思います。
自己肯定感を高く保ちやすいのが、年子の下の子なのかもしれません。
瀧靖之
東北大学教授
