「早生まれ」についての基礎知識
「本当はすごい早生まれ」……そういわれてこの記事を読んでいるあなたは、もしかしたら
・ご自身が早生まれ
・お子さんが早生まれ(もしくはこれから生まれるお子さんが早生まれ)
という方が大部分ではないでしょうか。
「早生まれがすごいって、どういうこと?」という期待がある一方で、早生まれに関して何らかの不安をお持ちの方もいるかもしれません。お子さんの成績の伸びや受験に関して、「もしかして早生まれのせいかもしれない……」と、心配をしている方もいるでしょう。また、親子で早生まれのために、早生まれとしての科学的、教育的な知識をしっかりと仕入れておきたいという要望もあるかもしれません。
では、早生まれとは、正確にはいつからいつまでのことをいうのでしょうか。そして、それはなぜなのでしょうか。
意外と知らない! 4月1日生まれが「早生まれ」
日本では、1月1日から4月1日までに生まれた人が「早生まれ」とされ、4月2日から12月31日までに生まれた人は「遅生まれ」とされます。学年の中で一番最初の誕生日となるのが4月2日、最後となるのが翌年の4月1日です。生まれた年が違う子どもたちが同じ学年になるのは、「学校教育法 十七条」に次のように定められているからです。
日本では、小学校の始まりは4月1日と定められています。そのため、6歳の誕生日を迎えた満6歳の子は、7歳の誕生日を迎える前の4月に、小学生になるのです。
ちょっとわかりにくいのが、4月1日生まれの子です。4月1日生まれの子が、なぜ前の学年の最後になるのか、不思議ですよね。他の4月生まれの子より1年早く小学校に入学するのは、「満年齢」の数え方が民法で定められているからです。
民法では、誕生日の前日の24時に一つ歳をとることとなっています。そのため法律上は、4月1日生まれの子が満6歳になるのは3月31日の夜の24時。「満六歳に達した日(3月31日)の翌日以後における最初の学年の初め」となるのは、実際に誕生日を迎える4月1日となります。満年齢の数え方のために、4月1日生まれの子は、一足早く小学校へ入学することになるわけです。
子どもが生まれた日は、保育園の入園式の日だった
学年の境目付近の誕生日の子は入学年を選べる国もありますが、日本ではそうはいきません。そのため、小学校入学のはるか前から、この「早生まれ」という制度は親を悩ませています。入学に悩まされるのは、小学校だけではないからです。
4月1日の夜1時に陣痛が来たあるお母さんは、痛むお腹を抱えながら病院へ。そばにいた助産師さんに、「何とか明日になりませんか?」と聞いたといいます。「そんなこといってないで、もう生まれますよ!」といわれ、その朝に元気な男の子が誕生。4月1日生まれとなりました。
このお母さんが4月2日に産みたかったのには、訳がありました。生まれたその日、同学年になる子どもたちの保育園の入園式が行われていたからです。当時は保育園に入るのが非常に難しかっただけでなく、4月の保育園入園者はたてい1月から2月に決定します。そもそも早生まれの子の多くが、応募さえできないのです。上の子がいたこのお母さんは、ほんの数時間の違いで、保育園へ入園させることができず、仕事の復帰が大きく遠のいてしまったのです。「何とか遅生まれに」と親が願うのは、実はこのような制度の壁も関係しています。入学年度が選べない日本では、数時間の差が大きな違いを生んでしまうのです。
瀧靖之
東北大学教授
