早生まれが持つ「愛される力」はこんなに役立つ!
早生まれの人はよく、「みんなからかわいがられた」といいます。親のアンケートにも、「かわいい」という言葉が散見します。
保育園や幼稚園では、早生まれの子というのは体格的に小さい子も多く、遅生まれの子よりも幼いため、先生方としても「手をかけてあげなきゃ」という気持ちになるようです。
早生まれの方の中には、そんな幼少期を過ごされた方も多いかもしれません。思い出してみて下さい。周りから、いろいろとお世話されていませんでしたか? ある男の子のお母さんの話です。
保育園にお迎えに行くと、しっかりした女の子が私のところにやってきて、その日にあったことを教えてくれるんです。「ハサミが上手く使えなかったから、一緒にやったよ」などと、毎日のように報告を受けていました。物心ついた頃からできる女子に助けられて育ったせいか、小学校に上がってからは、担任の先生から「女子ともうまくやっています」といわれています。
親や先生だけでなく、同学年からもかわいがられて育つのが早生まれ族のようです。
エリートは自分から「助けて」といえないことが多い
私は、「人の助けを受け入れるマインド」を持てることは、けっこう重要なことなのではないかと考えています。というのは、周囲の優秀な人々が、自分一人だけで頑張りすぎて人と助け合うことができずに、物事が大きく進まない様子を何度も見てきたからです。
それは、研究においても、ビジネスにおいても同じだと思います。私自身は物事を進める中で、自分に足りない能力に関しては、それを持っている同に頼ることがあり、チームを常に意識して動いています。チームの中で、誰が何に向いているのかを常に確認しながら、責任と役割を分担しています。これは何も私に限ったことではなく、上手くいっている企業や組織では当たり前のことです。
しかし、スーパーエリートの中には、身を削ってまで、全て一人でやろうとする人が少なからずいる印象です。人に頼ること、任せることよりも自分でやったほうが早いという気持ちが強いのかもしれません。もしかすると、「これができない」といったり、助けを求めたりすることができないのかもしれません。
しかし、一人でできることには限界がありますから、受験は突破できても、研究やビジネスで成果を上げることとはまた別問題、ということになります。
助けを受け入れられる力「受援力」
幼児期から自然に人のサポートを受け取ることに慣れている早生まれ族は、「できないことは助けてもらう」というマインドが自然に育っているといえます。このように、人の助けを受けることができる能力は「受援力」と呼ばれます。このような言葉が取り沙汰されること自体が、「人からのサポートを受けるのが苦手な人」が、増えている証拠ではないでしょうか。
実際、「何でもっと早く相談しなかったんだ」と思うことを経験している方も多いのではないでしょうか。早めにSOSを発信してくれればどうにかできたのに、ということは少なくないように思います。
受援力が育っていることは、もしかすると自己責任論が蔓延する現代社会での生きやすさにつながっているかもしれません。早生まれ族が自然と身につけている能力の一つだといえるでしょう。
「助けて」といえることは、どんな局面においてもとても大事なことだと思います。それは成功を目指す場面においても、失敗をしてどうにもならないときにも、必要なことなのです。早生まれのお子さんを持つ親御さんと話をしていると「知らない人から、よく物をもらう」という話が出てきます。
たしかにうちの息子も、外に連れていくとみんなからよく物をもらいました。仙台駅で長い時間電車の模型を見ていたら、スイスから来たビジネスパーソンが電車の模型を買ってくれたことも。もしかして、人が何かしてあげたくなるオーラが出ているのでしょうか……。皆さんにもそんなことがあったのではないでしょうか。
瀧靖之
東北大学教授
