早生まれ族に必要なのは「へこたれない力」…〈御三家〉に不合格だった生徒が多く入学する中高一貫校が「レジリエンス」を重視するワケ【脳科学者が解説】

早生まれ族に必要なのは「へこたれない力」…〈御三家〉に不合格だった生徒が多く入学する中高一貫校が「レジリエンス」を重視するワケ【脳科学者が解説】
(※画像はイメージです/PIXTA)

自己肯定感が下がりがちな早生まれの子どもを褒めるにはどんな褒め方が効果的なのでしょうか? 脳科学と心理学の観点から、子どもの意欲を引き出し、成長を後押しする声かけのコツを、脳科学者で東北大学教授の瀧靖之氏の著書『本当はすごい早生まれ』(飛鳥新社)より一部を抜粋・編集して解説します。

自己肯定感を高める褒め方① 「結果」ではなく「努力」を褒める

1位だったから、100点をとったからと、その「結果」だけを褒めていると、人はできることしかしなくなってしまいます。

 

あの有名なアドラー心理学でも、「結果を褒めてはいけない」と主張しています。

 

アドラー心理学の研究者である哲学者の岸見一郎氏は、著書『叱らない、ほめない、命じない。―あたらしいリーダー論―』の中で、次のように述べています(*1)。

 

ほめることの問題点は二つあります。

 

一つには、ほめられるために頑張ろうとする人が出てくることです。上司からほめられた人たちは、無意識のうちに、上司からほめられることだけをするようになります。逆にいえば、ほめられないことは、何もしません。ほめてくれる人がいないかぎり、自分の判断で動くことがなくなると、子育ての場面でも、職場でも、困ったことになります。

 

1位をとれることだけをする。100点をとれる簡単な問題しかしなくなるなど、課題の継続という面で、悪影響が出てしまうのです。一方で、「努力」を褒められた人は、意欲が高まり努力し続けることがわかっています。

 

小学5年生を対象とした研究では、「努力を褒められた子ども」は、「知能を褒められた子ども」よりも、最終的に学業成績が向上したことが示されています(*2)。失敗をしても、「努力」を褒められた子どもは、粘り強く、楽しみながら課題に挑戦し、最終的には成績が向上したといいます。一方で、「知性」を褒められた子どもは、成績が伸び悩む傾向がありました。

 

「やればできる」と思い、頑張ったのは、 「努力」が評価された子だったのです。

 

お子さんが今、運動や勉強などでいい成績をとれなくても、問題ありません。なぜなら、自己肯定感を高め、人の能力を伸ばすためには、その「努力」に着目することが大切だからです。「足が速いね」「頭がいいね」と、「結果」や「状態」を褒めるのではなく、 「最後まで頑張ったね」「一生懸命勉強していたね」と、その「努力」を見つけて伝えていきましょう。これはもちろん、遅生まれの子にも、会社の部下にも効果がある褒め方です。

 

自己肯定感を高める褒め方② 褒めると同時に、しっかり叱る

子どもの自己肯定感を高めるために、「努力」を褒めるのがよい、ということがわかりました。では、褒め続けるだけでいいのでしょうか。

 

実は、褒められるだけでは、十分ではありません。同時にしっかりと叱ることが大切なのです。

 

国立青少年教育振興機構が2018年に行った「子供の頃の体験がはぐくむ力とその成果に関する調査研究(*3)」という研究があります。子どもの頃の「親」「先生」「近所の人」からの、「褒められた経験(褒)」と「厳しく叱られた経験(叱)」を調査し、その割合(多・少)と、「現在の自己肯定感」「現在のへこたれない力」を比べたものです。

 

まず、「現在の自己肯定感」に注目して見てみましょう。

出所:『本当はすごい早生まれ』(飛鳥新社)より
【図表】1 出所:『本当はすごい早生まれ』(飛鳥新社)より

 

「親」「先生」「近所の人」のいずれの場合も、最も自己肯定感が高く育った大人は、「たくさん褒められ、たくさん叱られた群」でした。「褒められてばかりで、叱られなかった群」より、叱られた人の方が自己肯定感が高い大人に育ったということです。

 

もしかすると、褒められてばかりだと、その褒め言葉自体を軽く捉えてしまうのかもしれません。親には、「褒めるときには褒める、叱るときには叱る」というメリハリが求められそうです。

 

さらに見ていくと、全体的に自己肯定感が低く出ているのは、「褒められもせず、叱られもしない群」だということがわかります。褒めも叱りもしないということは、子どもに興味を示さないということです。周りの大人からの子どもに対する興味関心は、将来の自己肯定感に大きく関わってくるのです。

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※本連載は、瀧靖之氏の著書『本当はすごい早生まれ』(飛鳥新社)より一部を抜粋・再編集したものです。

本当はすごい早生まれ

本当はすごい早生まれ

瀧 靖之

飛鳥新社

16万人以上のMRIを見た脳科学者であり、 早生まれの子どもを育てる著者が、 「早生まれは不利」という常識を科学的に覆す! ・生まれながらに「変化に強い力」を持つ早生まれ族 ・いちばんのNGは、「親が勝手に悲観する…

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