自己肯定感を高める褒め方① 「結果」ではなく「努力」を褒める
1位だったから、100点をとったからと、その「結果」だけを褒めていると、人はできることしかしなくなってしまいます。
あの有名なアドラー心理学でも、「結果を褒めてはいけない」と主張しています。
アドラー心理学の研究者である哲学者の岸見一郎氏は、著書『叱らない、ほめない、命じない。―あたらしいリーダー論―』の中で、次のように述べています(*1)。
ほめることの問題点は二つあります。
一つには、ほめられるために頑張ろうとする人が出てくることです。上司からほめられた人たちは、無意識のうちに、上司からほめられることだけをするようになります。逆にいえば、ほめられないことは、何もしません。ほめてくれる人がいないかぎり、自分の判断で動くことがなくなると、子育ての場面でも、職場でも、困ったことになります。
1位をとれることだけをする。100点をとれる簡単な問題しかしなくなるなど、課題の継続という面で、悪影響が出てしまうのです。一方で、「努力」を褒められた人は、意欲が高まり努力し続けることがわかっています。
小学5年生を対象とした研究では、「努力を褒められた子ども」は、「知能を褒められた子ども」よりも、最終的に学業成績が向上したことが示されています(*2)。失敗をしても、「努力」を褒められた子どもは、粘り強く、楽しみながら課題に挑戦し、最終的には成績が向上したといいます。一方で、「知性」を褒められた子どもは、成績が伸び悩む傾向がありました。
「やればできる」と思い、頑張ったのは、 「努力」が評価された子だったのです。
お子さんが今、運動や勉強などでいい成績をとれなくても、問題ありません。なぜなら、自己肯定感を高め、人の能力を伸ばすためには、その「努力」に着目することが大切だからです。「足が速いね」「頭がいいね」と、「結果」や「状態」を褒めるのではなく、 「最後まで頑張ったね」「一生懸命勉強していたね」と、その「努力」を見つけて伝えていきましょう。これはもちろん、遅生まれの子にも、会社の部下にも効果がある褒め方です。
自己肯定感を高める褒め方② 褒めると同時に、しっかり叱る
子どもの自己肯定感を高めるために、「努力」を褒めるのがよい、ということがわかりました。では、褒め続けるだけでいいのでしょうか。
実は、褒められるだけでは、十分ではありません。同時にしっかりと叱ることが大切なのです。
国立青少年教育振興機構が2018年に行った「子供の頃の体験がはぐくむ力とその成果に関する調査研究(*3)」という研究があります。子どもの頃の「親」「先生」「近所の人」からの、「褒められた経験(褒)」と「厳しく叱られた経験(叱)」を調査し、その割合(多・少)と、「現在の自己肯定感」「現在のへこたれない力」を比べたものです。
まず、「現在の自己肯定感」に注目して見てみましょう。
「親」「先生」「近所の人」のいずれの場合も、最も自己肯定感が高く育った大人は、「たくさん褒められ、たくさん叱られた群」でした。「褒められてばかりで、叱られなかった群」より、叱られた人の方が自己肯定感が高い大人に育ったということです。
もしかすると、褒められてばかりだと、その褒め言葉自体を軽く捉えてしまうのかもしれません。親には、「褒めるときには褒める、叱るときには叱る」というメリハリが求められそうです。
さらに見ていくと、全体的に自己肯定感が低く出ているのは、「褒められもせず、叱られもしない群」だということがわかります。褒めも叱りもしないということは、子どもに興味を示さないということです。周りの大人からの子どもに対する興味関心は、将来の自己肯定感に大きく関わってくるのです。
