早生まれ族に必要なのは「へこたれない力」
最後に「現在のへこたれない力」と「親」との関係を見ておきましょう。「現在のへこたれない力」に関しては、親との関係のみを示しています。
ここではさらにはっきりと、「たくさん褒められ、たくさん叱られた群」と「褒められもせず、叱られもしない群」の差が出ています。結果的に「大器晩成」を狙うのが早生まれ族です。将来の成長のためには、自己肯定感と同時に、「へこたれない力」がどうしても必要です。なぜなら、幼少期から、ある人は小学校中学年、または高学年、ある人は中学生くらいまでは、同学年に遅れをとってしまう可能性があるからです。
「へこたれない力」は、「レジリエンス」とも言われ、人生や仕事において大切な力として近年注目されています。レジリエンスは「回復する力」のことで、「折れない心」と言い換えることもできます。
男子の中高一貫校の校長先生に聞いた、こんな話があります。その学校は、偏差値的に、トップ校の下のランクにあり、結果としていわゆる「御三家」などに不合格だった生徒が多く入学するといいます。
学校が中学1年生の1学期に特に重視するのは、まさにレジリエンスをはぐくむこと。いったん折れてしまった心を、回復させることだそうです。これは単に、生徒の心のケアという側面だけではないといいます。自己肯定感を回復させなければ、成績も伸びないから、というのです。
たとえ理想的な環境に身を置いていなくても、思い通りに行かなくても、自己肯定感を保ち、失敗しても何度でも挑戦できる「へこたれない力」を持つことは、早生まれ族がその後能力を発揮する礎となります。ちょっと注意されただけで、落ち込んでしまったり、諦めてしまったりしたら、何かを達成することはできません。
早生まれの子育て中の親御さんは特に、現在の「結果」や「状態」に目を向けるのではなく、「努力」に目を向けて、その「努力」をたくさん褒めていきましょう。そして、もちろん叱ることも忘れずに。
それが将来の早生まれ族を大いに助けてくれることになるのです。
参考文献・資料:
*1『叱らない、ほめない、命じない。-あたらしいリーダー論-』岸身一郎(著)、小野田鶴(構成・編集) 日経BP
*2C M Mueller, et al. Praise for intelligence can undermine children's motivation and performance. J Pers & Soc Psychol, Jul;75(1) 1998, 33-52.
*3「子供の頃の体験がはぐくむ力とその成果に関する調査研究」国立青少年教育振興機構(2018)
瀧靖之
東北大学教授
