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父の預金通帳の中身
引退を機に父自ら取り付けた手すりをつたいながら歩く85歳の父の姿に、現役時代の面影はありません。Aさんは父に、今後Aさんか姉の家で同居するか、施設に入居するか考えないといけないかもしれないと思いました。「お父さん、そろそろ一人暮らしは厳しいんじゃない?」と聞いてみました。しかし父から返ってきたのは、相変わらず「大丈夫」のひと言。Aさんは、父に聞くより姉とそのうち相談したほうがいいかも……と思い直します。
子どもの合格祝いにお寿司の出前をとり、久しぶりに家の中が賑やかになったと喜ぶ父は、孫の合格祝いを近くの金融機関で引き出してくると通帳を出してきました。父がトイレに立った隙に、興味本位で通帳を覗いたAさんは……「え?」思わず声をあげました。
通帳の残高がやけに少なくなっているのです。記帳欄をみると、合計1,000万円がなくなっているようです。「85歳のおじいさんが1,000万円も使う!? なにかあったんだわ!」腰を抜かすほど驚いたAさんでしたが、取り乱さないように心掛けながら、なるべく冷静にトイレから戻ってきた父に聞きました。
父がいうには、かつての仕事仲間から、高齢者が一度に多額の現金を引き出すことができなくなっていることを知ったのをきっかけに、いざというときのために毎月定額を引き出し、タンス預金にしていたとのこと。しかし、老人会の集まりでタンス預金の話をした数日後、金融機関の営業を名乗る人が自宅に訪れ、「タンス預金は物騒だから、高齢者でも一度に引き出せる口座に移しておくように」と勧められます。丁寧な説明に信じ込んだ父は、指定された口座に現金1,000万円を移したというのです。
「まさか父が詐欺被害に遭うなんて……」Aさんは複雑な思いを抱えました。父は、近々家をリフォームする姉を援助するため、営業を名乗る人に連絡した際、詐欺被害に気付いたそうです。いつまで経っても電話は繋がらず、不審に思い確認したところ、口座もなくなっていました。父は、子どもたちに心配かけてはいけないと、被害に遭ったことを黙っていたといいます。

