需給面、ファンダメンタルズ面、バリュエーション面からみる株価
3万8,000円は日経平均が2024年下半期から半年にわたってもみあってきたレンジの下値に当たる。相場がいったん下に抜け、その後の反騰局面ではそれまでの下値が、今度は上値の重石となることが多い。というのは、もみ合ってきたレンジでは投資家のポジションが累積してたまっているからだ。実際、価格帯別に累積売買代金をみると、3万8,000円台のそれが最も多く、ここを抜けるのは簡単ではないだろう。
さらなるアップサイドには強力な材料が必要だ。その本命は、米中協議だったが、双方115%の関税引き下げというポジティブ・サプライズとなった。それを受けての3万8,000円台回復である。今後、これ以上インパクトのあるプラス材料はそうそうない。
ファンダメンタルズ面からも、株価はいいところに来ている。従前から日経平均の理論株価を示してきた。日経平均を構成する225社全体の予想EPS(1株当たり純利益)を10年債利回りにリスクプレミアム5%を上乗せした資本コストで割り引いたものを理論株価としている。期待成長率は0%の仮定である。
2024年秋以降、金利上昇を背景として理論値が右肩下がりとなり、2025年年初からは実際の株価も上値の重さが目立ち始め、そして3月には持ち合いの下限であった3万8,000円を割り込んだ。ここまでは実際の株価は理論値に沿った動きをしていたが、4月のトランプ関税発動以降、実際の株価が急落するなか、理論値は上昇した。
これは市場が大幅減益を織り込みにいっているため、「見かけのEPS」で理論値を計算するのが大幅に不適合になったからである。加えて経済悪化の懸念から債券利回りが大きく下がったためである。
ところが足元では再び金利が上昇し、決算一巡後、予想EPSもとりあえずは開示されている。それらをもとにすれば理論値は3万6,000円だ。
株価を決める要因である金利と業績のどちらもネガティブな動きをしている――金利は上がり、EPSは低下している――のだから妥当な値だろう。
シンプルな話、日経平均のPER(株価収益率)は16倍台にまで上昇している。これは2024年年初からの平均15.8倍を上回る。
2024年夏の「令和のブラックマンデー」から回復したあとも、PER16倍で頭打ちとなった経緯がある。
需給面、ファンダメンタルズ面、バリュエーション面からみて、今後は現状水準でのもみ合いに移行するのではないかと考えられる。
広木 隆
マネックス証券株式会社
チーフ・ストラテジスト 執行役員
※本記事はマネックス証券 チーフ・ストラテジスト広木隆氏のストラテジーレポート『日本株 戻りも、目先はここまで』を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。また、投資による結果に編集部は一切責任を負いません。投資に関する決定は、自らの判断と責任により行っていただきますようお願いいたします。
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】
「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】



