心が折れそうになったこともありました…今は〈おひとりさま〉の75歳女性。「夫の先妻の子ども」に家は遺すと決断したワケ【相続の専門家が解説】

心が折れそうになったこともありました…今は〈おひとりさま〉の75歳女性。「夫の先妻の子ども」に家は遺すと決断したワケ【相続の専門家が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

子どもがいない夫婦にとって、配偶者の死後に「家を誰に遺すか」は大きな課題です。75歳の薫さんは、夫の死後、先妻の子どもたちとの相続協議で思わぬ苦労を経験しました。血縁がないからこそ、何も決めていなかったことが悔やまれたといいます。薫さんの決断は? 相続実務士・曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、背景とポイントを解説します。

夫は先に他界。子どもはいない。

「正直、あのときは悔しかったですよ。私には、家族として認められていないような気がして……」

 

薫さん(75歳・女性)は10年前に夫を亡くして、今は1人暮らしをしています。


夫には先妻の子どもが2人いますが、初婚の薫さんとの間には子どもに恵まれませんでした。

薫さんと夫が結婚した時期には、2人の子どもは独立していましたので、薫さんと2人の子どもは養子縁組をしていません。よって、配偶者亡き後の薫さんの相続人は亡実姉の子どもたちとなります。

自宅は亡夫から相続したものの…

薫さんは夫から自宅を相続して、いまもずっと1人で住み続けています。しかし、そこに至るまでは平坦な道ではありませんでした。

 

「夫が亡くなったとき、遺言書がなかったんです。だから、先妻の子どもたちと分割協議をすることになって……」


血のつながらない相手との話し合いは、思った以上にしんどいものでした。


「『父が建てた家ですから』なんて言われて……それを言われたとき、私は他人なのかって、胸が苦しくなりました」

 

結局、自宅は薫さんが相続することで決着しましたが、心にしこりが残りました。

 

「本当は、遺言書を書いておいてほしかった。でも、病床の夫にそんなことは言い出せなかったんです」

夫の家系に戻すための遺言書

夫の希望は、家は自分の子どもに残してあげたいということでした。
 

そうした意思は聞いていたものの、60代で自分の住む家を先妻の子ども名義にするのは現実的ではありませんでした。子どもたちもそれは承知でしたので、とりあえずは薫さん名義にしたのです。

 

そして、75歳になった今、夫の子どもたちとも相談をして、彼らに家を遺贈すると公正証書遺言を作りました。

 

「年金と預金で生活の見通しが立ってきたし、このまま家を残せると思えたんです。だから、今のうちに書こうと決めました」

 

お金は自分に使って残さない 

薫さんは、老後の生活についても自分なりの方針を持っています。

 

「私はこの家に住み続けたいけど、きょうだいや夫の子どもたちに老後の世話をしてもらうつもりはありません」

 

動けなくなったときには、年金と預金、保険を使って施設に入るつもりです。

 

「『自分のお金は自分のために使い切っていい』って思えたら、気持ちがすごく楽になったんです。財産を『残す』ことばかり考えてたら、逆に不安ばかりが膨らんでしまう気がして」


相続実務士のアドバイス

薫さんのように、子どもがいない人、配偶者に先立たれた人こそ、財産について自分の意思をはっきりと残しておくことが必要です。

 

誰に何を託すのか、あるいは何も託さず、自分のために使い切るのか。

 

人生100年時代──「残す」ことだけが相続ではありません。「活用する」ことで人生を最後まで自分らしく生きる。その選択肢もまた、尊重されるべきものです。

 

曽根 惠子
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®

株式会社夢相続 代表取締役

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp)認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

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