父親と母親ともに遺産分割ができていない
不二雄さん(68歳)が相談に来られて、聞いてみるとご両親の相続手続きができていないというのです。
父親は13年前に亡くなり、その後、1人暮らしをしていた母親が昨年亡くなりました。
不二雄さんは長男で、弟と妹がいます。ご両親と同居していた子どもはいませんでした。母親は80代半ばまで1人暮らしをしていましたが、その後しばらく介護施設で生活し、そこで亡くなりました。
父親の金融資産が減っている
13年前に父親が亡くなったとき、相続税の基礎控除は9,000万円でしたので、母親と共有の自宅と金融資産ではその範囲に入っていたのかと思われますが、遺産分割協議もせずに年月が経ちました。
それには理由があり、父親が入院して、その後、介護施設に入ることになり、預金の管理は母親では大変だと、妹に任せた時期がありました。
仕事が忙しい不二雄さんや弟よりも、妹のほうが適任と思ったからです。入出金を報告するようにと言っても報告しないことが続き、不審に思った不二雄さんは通帳を取り上げて、自分が管理をするように切り替えました。
確認すると多額の現金が引き出されており、問い詰めても妹からは返事がなく、不二雄さんは、妹には実家に出入りするなと通告したのです。
きょうだいだけでは話ができない
そうしたことから妹と溝ができ、妹に同調した弟とも疎遠になり、13年が経過したのです。母親が亡くなったことをきっかけとして、いよいよ父親も含めた相続の手続きをしてしまいたいところ、弟、妹とは円満な話ができそうにないといいます。
過去にとらわれていると進めない
不二雄さんとしては、妹が引き出したであろう預金について、本人から明確な説明をしてもらい、それができたら相続手続きに入りたいということです。
しかし妹にも言い分があるでしょうから、過去に戻って追及することがよしとは言えません。
そこで、こちらで提案したことは、今残っている財産について遺産分割協議をしようと全員が同じ考えとなり、取り組んだほうがよいこと。それができるのであれば、サポートしますということでした。
その2ヶ月後にまた不二雄さんが来られて、残っている財産について3等分することで弟、妹にも伝えて了解を得たのでお願いしますと言われたのです。
空き家の自宅を処分し、母親の預金を解約、費用や税金を払った残りを3等分することで全員の合意が得られて、別々に遺産分割協議書の調印ができました。
これから自宅を売却、換金して、3人に等分に分ける実務に入ります。
相続実務士のアドバイス
13年の溝は簡単には埋められませんが、全部を明らかにするための調停で疲弊するよりは、前向きな選択肢だとおすすめしました。
家庭裁判所の調停で過去のことが明らかになるとは限らないのです。傷を広げるよりは、早く終えられることを優先しました。
曽根 惠子
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®
株式会社夢相続 代表取締役
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp)認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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