お互いに驚愕「貯金ないの?」「あなた、まだ働くんでしょ?」
「うちの貯金ってどんな感じ? そろそろ俺も退職だからさ」……先輩の話を交えながら妻に聞いた高山さん。
妻はきょとんとしながら、こう返します。
「え? あなた65歳まで働くんでしょ。まだまだ先じゃない」
「いや、雇用延長はできても給料が半分に減るんだよ。うちの会社、業績厳しいからなぁ。もっと下がるかもしれないな」
その言葉に顔色を変えた妻。そして、高山さんが知ったのは、その時点で貯金が180万円を切るほどしかないという事実でした。
「180万円……? いや、さすがにこれだけじゃないだろ?」
しかし、娘にかかった塾代、習い事代、私立の学費。好立地に買った新築マンションの住宅ローンや管理費、修繕積立金。「友達のような母と子」だった妻と娘の娯楽費。高山さんがもらっていたお小遣いと、足りないときのプラスアルファのお金……。
そうした積み重ねで、貯金を増やすことができないままここまで来てしまったというのです。
「ごめんね、あなたがまだまだ働くから、なんとかなると思ってた。そんなに収入が下がるなんて、知らなかったの。年金だけじゃ足りないかな……」
高山さんは、お金に無頓着で妻に任せっきりにしていた自分を悔いたといいます。
慌てて確認したところ、住宅ローンはまだ10年以上残っており、おそらく1500万円程度もらえるであろう退職金で、なんとか完済できるかどうか。つまり退職金はローンで消えてしまうということです。
年金はもらえるけれど、それだけで足りるのか? 娘の授業料を払いきって、自分たちの老後にも備えて。アディショナルタイムどころか、今からもっと稼ぐことを考えなくてはならない……。幸せに思えていた家庭に、暗雲が立ち込めた瞬間でした。
「お任せ」で本当に大丈夫?
高山さんの例のように、家計管理を夫婦どちらかに一任していると、収支が見えず、「貯金をしていると思っていたら、全然できていなかった」ということになる場合があります。
高山さんは、「自分の実家では母が家計を握っていて問題なかったから、それが普通だと思っていた」と言います。一方の妻も、「友達もみんな貯金できないって言ってたし、それでも何とかなるものだと思っていた」と語りました。
たとえ一緒に暮らす夫婦でも、お金の話はきちんと共有しなければ分からないことがあります。お任せにするのではなく、一緒に向き合うことが、将来の安心につながるのです。
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