国民から絶賛された「老人医療費の無料化」が崩壊
1973年から始まった老人医療費の無料化は国民に喝采をもって迎えられましたが、のちに「日本の医療政策最大の失敗」といわれるようになります。まず懸念されたのが、国民医療費の爆発的な伸びです。【図表1】は、人口10万人あたりの年齢階級別受療率(受診率)を1970年と1975年で比較したグラフです。
これを見ると、この5年間で70歳以上の受診率が約1.8倍も増加しています。70歳以上の高齢者は、病院やクリニックに何度かかっても「タダ(無料)」になったため、必要以上に受診する人が増えたからです。大した病気でなくても受診する高齢者が増えたため「病院の待合室はサロン化した老人クラブ」とよく話題になりました。
たとえ大した病気でなくても、患者が医療機関を受診すれば国民医療費が発生し、国や自治体の税金が使われることになります。特に高齢者の加入者が多い国民健康保険の財政状況は急激に悪化しました。
老人医療費の無料化を決めた1972年は日本経済もまだ順調に成長していましたが、1973年にはオイルショックが起き、日本の高度経済成長も終わりを告げます。ちょうどそのタイミングで膨れ上がるようになった老人医療費は、その後の国と自治体の財政を圧迫し続けることになります。
また、老人医療費の無料化は高齢者の「社会的入院」を増大させることになり、わが国の介護事業の円滑な伸展を妨げる結果にもなりました。
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