医師数の過剰が危惧され、医師数は抑制へ
老人医療費の無料化が見直され、民間病院の増えすぎた病床数も見直されました。そして次に見直しの対象となったのが医師数です。
一県一医大構想の実現により、1961年には2840人だった医学部の定員が1981年には8280人へと増大することが明らかになりました。すると今度は逆に、医師数が必要以上に増えすぎるのではないかと危惧する人々が現れました。医師数が過剰になることの問題点としては、次の3点が考えられました。
まず一つ目が、医師数の増加したことが不必要な需要を生む可能性があることです。例えば身近に開業医が増えれば、それまで受診しなかった人も受診しようかと考えるようになって結果的に不必要な受診が増え、その分国民医療費が増大します。また、病院同士、開業医同士の過当競争が始まれば、患者を引き込むために時間外診療など新たな医療サービスが始まることになり、その結果患者の受診回数が増えて医療費増加につながる可能性があります。
二つ目が、医師の増加により失業や廃業する医師も出るかもしれないことです。それまで診療を行っていた医師が廃業すれば、その医師にかかっていた患者はかかりつけ医を失うことになり、不利益が生じます。
三つ目が、医師の増加により、医療の質が低下する恐れのあることです。あってはならないことですが、粗製濫造という言葉もあります。あまりに医師が増えすぎると、医師には本来不適格な人まで医師になる可能性があり、医療界全体として医療の質を担保できなくなる恐れもあります。
そこで1982年、当時の鈴木善幸内閣は「今後における行政改革の具体的方策について」という閣議決定で「医師および歯科医師については、全体として過剰を招かないよう配慮し、適正な水準となるよう合理的な養成計画の確立について政府部内において検討を進める」としました。
厚生省はそれを受けて1986年に「将来の医師需給に関する検討委員会」の最終意見として「2025年には医師の10%が過剰になるとの将来推計に基づき、1995年を目途に医師の新規参入を10%程度削減する」と提言しました。また文部省も、1987年の「医学教育の改善に関する調査研究協力者会議」の最終まとめとして「1995年に新たに医師になる者を10%程度抑制することを目標として、国公私立大学を通じて入学者数の削減等の措置を講じること」を提言しました。
この厚生省と文部省の提言により、各大学における医学部入学定員の削減が実際に行われました。その結果、1981年の入学定員8280人が、その20年余りあとの2004年には7625人にまで、7.9%削減されたのです。
原口 兼明
医療法人 原口耳鼻咽喉科 院長
医学博士
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