(※写真はイメージです/PIXTA)

政府によって発表された高齢社会対策大綱にも「高齢者の医療費負担率引上」が含まれ、高齢者医療費の公費負担について再考するタイミングが近づいています。少子高齢化社会が進行してきた日本では高齢者医療費にまつわる制度はどのように変化してきたのでしょう。本記事では原口兼明氏の著書『医療崩壊前夜』(幻冬舎メディアコンサルティング)より抜粋し、後期高齢者医療制度が導入されるまでの過程について詳しく解説します。

後期高齢者医療制度が導入されるまで

そもそもなぜ、まるで高齢者いじめのような後期高齢者医療制度が誕生したのか。それを知るためには、わが国のこれまでの高齢者福祉政策を振り返ってみる必要があります。

 

戦後のわが国の高齢者対策は、1963年に制定・施行された老人福祉法からスタートしました。わが国が高度経済成長でめざましい発展を遂げていく過程で、日本社会の家族の在り方も急速に変化していきます。それまで、ごく普通に行われていた3世代同居という形が崩れ、若年人口が都市部に集中し、やがて核家族化していきます。

 

そうした社会環境の変化によって、それまではあまり一般的でなかった独居老人が増え、なかには介護を必要とする高齢者も存在するようになりました。かつては家庭内介護が当たり前でしたが、子ども世帯は地方から遠く離れた都会に暮らしているため、「要介護のお年寄りは社会全体で支えていこう」というコンセンサスが国民の間で生まれました。

 

その思いを法制化したのが老人福祉法であり、この法律の考え方に基づき、養護老人ホームや特別養護老人ホームなどの高齢者施設が整備されていくことになります。

 

老人福祉法第2条は、この法律の基本的理念を次のように定めています。

 

老人福祉法第2条【基本的理念】

老人は、多年にわたり社会の進展に寄与してきた者として、かつ、豊富な知識と経障されるものとする。験を有する者として敬愛されるとともに、生きがいを持てる健全で安らかな生活を保障されるものとする。

 

今日運営されている後期高齢者医療制度が、この老人福祉法の精神に則のっとっているかどうかはさておき、少なくとも1963年の時点で、わが国の社会も法律も、高齢者をいたわる気持ちはあったようです。

 

 

8/23(土)THE GOLD ONLINE フェス2025 SUMMER 連動企画
「THE GOLD ONLINE 川柳コンテスト」作品募集!

※募集期間:6月1日~8月13日

次ページ「老人医療費無料化」が国民健康保険に与えた影響

本連載は、原口兼明氏の著書、『医療崩壊前夜』(幻冬舎メディアコンサルティング)から一部を抜粋・再編集したものです。

医療崩壊前夜

医療崩壊前夜

原口 兼明

幻冬舎メディアコンサルティング

崩壊寸前、日本医療の現実 ベテラン医師が切り込む!医療費削減政策の問題点とは? 日本の医療崩壊を防ぐために、いまなにをすべきか? 1961年に導入された国民皆保険制度によって、すべての国民は必要な時に必要な医療…

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録