(※写真はイメージです/PIXTA)

医師が診療した際に発生する報酬(診療報酬)は、右肩下がりに抑制されつづけています。なかでも、薬価が占める割合が引き下げられたことにより、海外新薬が輸入されにくい状況にあります。このように抑制された診療報酬は日本医療全体の質・量の損失を招いている、と指摘するのは、医療法人 原口耳鼻咽喉科 院長の原口兼明医学博士です。本記事では原口氏の著書『医療崩壊前夜』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・再編集し、詳しく解説します。

医療に広がる欧米と日本の格差。日本は深刻なドラッグロスに

診療報酬の薬価引き下げは、日本で暮らす私たちにさらなる不利益をもたらしています。それは、海外で開発された画期的な新薬がわが国に入ってこないという、ドラッグロスの問題です。海外製医薬品の国内流通に関しては、二つの問題が指摘されています。一つは、海外製新薬が日本で承認されるまでに長大な時間がかかる「ドラッグラグ」、そしてもう一つが、海外製新薬が日本国内で使えない「ドラッグロス」の問題です。

 

例えば2016年から2020年にかけての5年間で、欧米では243品目の新薬が承認されているというのに、そのうち176品目はいまだ日本国内に流通していません。また、この期間にアメリカで承認された抗がん剤に限ってみても、その68%が日本では未承認のままなのです。

 

欧米で開発された新薬がなぜ日本に入って来ないのか。その理由の一つに、診療報酬の薬価の低さがあります。日本の薬価の低さは欧米の大手製薬会社にもよく知られていて「日本では利益が見込めないので、あえて日本市場に製品を投入する必要がない」と見られているのです。

 

海外製の新薬について、かつては日本で承認審査されるまでに時間がかかりすぎるドラッグラグが問題になっていました。しかし、いまや状況はさらに悪化しており、日本市場そのものが相手にされなくなってきています。結果として、欧米の新薬があれば救える患者も、日本では救えないという悲劇的な状況が生まれています。

 

また、近年の新薬開発においては、新興のバイオベンチャー企業が大きな成果を上げていますが、彼らは欧米の大手製薬会社のように日本支社を持っているわけではなく、そもそも日本との接点がないし、わざわざ自社製品を売り込みにいくほど、日本市場に魅力を感じていないようです。

 

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本連載は、原口兼明氏の著書、『医療崩壊前夜』(幻冬舎メディアコンサルティング)から一部を抜粋・再編集したものです。

医療崩壊前夜

医療崩壊前夜

原口 兼明

幻冬舎メディアコンサルティング

崩壊寸前、日本医療の現実 ベテラン医師が切り込む!医療費削減政策の問題点とは? 日本の医療崩壊を防ぐために、いまなにをすべきか? 1961年に導入された国民皆保険制度によって、すべての国民は必要な時に必要な医療…

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