兄の一言に涙…独身の妹が背負った介護の現実
三田直子さん(仮名・49歳)は独身の会社員。年収420万円ほどで都内の会社で働いています。25歳の時に実家を出て以来、長く一人暮らしをしていましたが、認知症を患った母(82歳)の面倒を見るため5年ほど前に実家に戻ってきました。
父はすでに他界しており、5歳年上の兄は既婚で家族を持っていたので金銭的な補助のみ。実質的な介護のすべてを三田さんが担うことになったといいます。
「最初はそれほど大変ではなかったんです。でも、病状が少しずつ進行していって……。今では入浴やトイレにも手助けが必要になり、通院の付き添いも一苦労。介護ヘルパーさんに来てもらっても負担が大きくて。なにより昔の母がだんだんいなくなってしまうことが辛かった」
会社には事情を伝えてリモート勤務を増やしてもらい、定時で帰れるようなポジションに異動させてもらうなどして、なんとか両立。しかし、限界を感じ、ケアマネジャーと相談のうえ、施設入所の手続きを進めることに。
ところが、そんな三田さんの苦労に水を差したのは、兄の一言でした。
ーー母さん、この家で暮らしたいって言ってただろ。施設に入れるなんて、それでいいのか? 親不孝なんじゃないか。あと何年もないかもしれないのにーー
母がずっとこの家にいたいと思っていることを三田さんも知っていました。それでも、このままでは介護離職になり、自分の将来も危うくなる。考えた末での決断だったのに、その言葉。涙が止まらなかったといいます。
「お金の面で兄が負担してくれていることには感謝しています。でも、実際に毎日介護しているのは私です。母の年金は遺族年金と合わせても月10万円程度。私も多くない貯金からリフォーム費用や介護用品などを負担してきました。それに、もし介護のために離職したら、私自身の人生はどうなるんでしょうか? 母にも悲しまれ、兄にもああ言われたら、報われません」
介護が家族関係を壊す…そうならないために
三田さんのように、親の介護をきっかけとして兄弟姉妹の仲が悪化することは珍しくありません。
大前提として、金銭面については「親の介護費は親の財布から」が基本。三田さんの家のように親に財産がない場合、その負担についてもしっかりと話し合う必要があります。
また、「介護の負担に応じた相続」を求めて揉めるケースも多いため、家族信託や遺言書の活用など、早めの対策も有効です。
一方で、何より大切なのは感情のケアです。介護を担う人は、精神的にも追い詰められがち。お金の負担だけでなく「ありがとう」という一言が支えになります。
多くの人にとって他人事ではない介護。いつか訪れるそのときに備えて話し合いをしておきましょう。
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