(※画像はイメージです/PIXTA)

投資にリスクはつきものです。「プロの投資家ではなく、素人ならばなおのこと」という考えは一理あります。一方で、“推し企業”について深く掘り下げ、追いかけることで、プロが網羅しきれないような領域まで踏み込んでいける可能性があります。そうした“推し投資”と投資のメリットについて、Apple株をいち早く購入して90倍にした経験のある投資家・中島聡氏の著書『メタトレンド投資 10倍株・100倍株の見つけ方』(徳間書店)から一部抜粋・再編集し、詳しく解説します。

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「倒産寸前」企業に投資をする、深い理由

ここまでは推したいという情熱を原動力とした投資の流れをご紹介してきました。しかし、実はその逆のパターン、つまり「その企業や業界について深く知りたいから、あえて投資する」という戦略も有効です。

 

これは「この企業をもっと詳しく知りたい、だからこそ少額投資をして、まずは自分ごと化してみよう」という、いわば「学び」を目的とした投資手法です。たとえば、「よく知らない業界だけれど、なぜか妙に気になる」と感じる企業やサービスに出合ったとき、私はまず少額だけ投資してみることにしています。

 

ここまでお伝えしたように、株主になることで、その企業や業界に関する情報を自然と集めるようになり、自発的に勉強するモチベーションが飛躍的に高まるからです。お金を投じることで、その企業への関心度が格段に上がり、「もっと深く知りたい、理解したい」という知的好奇心が強く刺激されるのです。

 

最近、私がこの「学びのための投資」を実践したのが、アメリカのEVメーカー、Rivian(リヴィアン)です。ある時期から、Rivianの存在が妙に気になりはじめました。メディアの報道では、アメリカのEV市場はTeslaが圧倒的なシェアを誇り、BYD、フォード、GM(ゼネラルモーターズ)などがそれに続くとされています。

 

しかし、私が住む地域では、Teslaに次いで、Rivianの自動車を頻繁に見かけるのです。体感的には「8割がTesla、残りの2割がRivian」という印象でした。さらに、私の知人もRivianの自動車を所有しており、感想を聞いたところ、「デザインや乗り心地が最高で、他の車にはもう乗れない」と絶賛していました。

 

そこで「いきなり大金を投じるのはリスクが高い。まずは少額の投資で、この企業について徹底的に調べてみよう」と考え、Rivianをウォッチリストに追加し、実際に少量の株を購入してみました。

 

財務諸表に目を通してみると、Rivianはまだ多額の赤字を計上しており、自動車を1台販売するごとに損失が発生している状況でした。財務状況だけを見れば、「そう遠くないうちに経営破綻しても不思議ではない」といわれても仕方がない状態です。

 

そうやってウォッチしている間に、フォルクスワーゲンから資金調達し、さらにジョイントベンチャーを作って、そこからソフトウェアをフォルクスワーゲンと共同開発することまで決まりました。

 

まだ、この提携がどこまで花開くかはわかりませんが、Tesla以外の自動車会社はどこもソフトウェアが不得意なので、ソフトウェアに強いRivianが自動車業界で大きな役割を果たす可能性がないともいえません。ですから、しばらくはこのまま株を保有し続け、様子見しようと思っています。

 

もうひとつ、私が「学び」のために投資した企業として、Unity Technologies(ユニテ
ィ・テクノロジーズ)が挙げられます。ここは、3Dゲーム開発で世界的に使用されているゲームエンジン「Unity(ユニティ)」を開発・提供している企業です。

 

近年、ゲーム開発以外にも、医療、製造、建築など、幅広い産業分野で活用されはじめており、将来

的にビジネスの現場で大きく活用される可能性に期待し、私はUnity Technologiesに興味を持ちました。

 

そこで、まずは少額の投資を実行し、ビジネスモデルや業績、将来性について、自分なりに詳しく調査・分析してみました。

 

しかしある時点でビジネスモデルを変更し、Unityを使ってゲームを開発している開発者たちを怒らせてしまったのです。この事件以降、じっくり長期保有したい会社だとは感じられなくなり、購入した株は早々に売却しました。

 

結果的に、Unity Technologiesへの投資で少し損失を被ってしまいました。しかし、Unity Technologiesという企業やビジネスモデル、そしてゲームエンジン業界について、ある程度深く理解できたことは、私にとって大きな収穫でした。「自分には合わない投資先」という判断ができたことで、無駄な損失を回避し、迅速に損切りを実行できたのです。

 

今後の投資判断に必ず活かせる、貴重な「学び」への投資だったといえるでしょう。
 

 

中島 聡

エンジニア・起業家・投資家

 

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※本連載は、中島聡氏による著書『メタトレンド投資 10倍株・100倍株の見つけ方』(徳間書店)より一部を抜粋・再編集したものです。

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