「特定親族特別控除」がアメリカ人にとって理解不能なワケ
とはいえ、この「特定親族特別控除」、アメリカ人からするとまったく理解できないお話なのです。
アメリカで近いものとしては、13歳未満のこどもがいる親を対象とした「Child Tax Credit(児童税額控除)」や大学生のこどもに教育費を支払った親が確定申告することで最大4年間税額控除を受けられる「American Opportunity Tax Credit(アメリカ教育税額控除)」がありますが、いずれも教育費や授業料に限定されており、日本のように学生アルバイトの収入に応じて控除が変動する仕組みは見られません。
「American Opportunity Tax Credit」は授業料・学費・授業に必要な書籍・文房具の購入にしか使うことが許されず、学生1人につき最大でも年間2,500ドル(=約37万円)と定められています。日本の税制と比べてみると、大きく異なることがわかるでしょう。
その背景には、アメリカの大学生がアルバイトにあまり時間を割いていないという現状があります。アメリカの多くの大学は都市から離れた地方にあり、学生はキャンパス内で寮生活を送るため、アルバイトの機会自体が少ないのです。24時間開いているのは図書館くらいで、学生たちは基本的に勉強に集中する環境に置かれています。
日本政府の「新税制」は的外れ?
「特定親族特別控除」に話を戻すと、そもそも年収188万円を超えるようなアルバイトをしている大学生が、本当に学業に専念できているのかという疑問もあります。本来、大学に通う目的は勉学であり、アルバイトをするためではありません。AIなどの先端分野で国際競争が激しさを増すなか、アルバイト中心の学生生活では、将来の日本の競争力が危ぶまれます。
ゆとり教育という制度に始まり、アルバイト漬けで勉強に時間を割けないような日本の大学生と、町から隔絶されて勉学に勤しむアメリカの大学生の知識に大きな差が開くのも当然です。
政府はあたかも学生の労働を奨励するかのような税制を創設しましたが、本来であれば、アメリカのように国や公益法人による学業支援制度の拡充こそが求められているのではないでしょうか。
税理士法人奥村会計事務所 代表
奥村眞吾
