「頼られると、いい顔をしてしまう」困った悪癖
元会社員の高橋さん(仮名)は、地元企業で働くこと40年超、65歳で完全リタイアを果たしました。
60歳時に受け取った退職金の残りと貯蓄で、65歳の時の資産はおよそ2,200万円。自身の年金は月17万円強、妻は月7万円弱。合わせて月24万円ほどの年金暮らしです。
特別少ない年金ではありませんが、高橋さんの場合、40代のときに買ったマンションの住宅ローンが70歳まで残っています。管理費や修繕積立金などを含めると、住宅関連費だけで13万円以上です。
現役時代、高橋さんには特別な趣味もなく、子育ては妻に任せて仕事に邁進する「昭和スタイル」の会社員でした。60歳を過ぎて継続雇用になっても、「高橋さんに聞けば何でもわかる」と職場でも重宝されていたそうです。
しかし、仕事を辞めた途端に行く場所はなくなり、誰からも求められなくなります。友人の中には孫の世話で忙しいという人もいましたが、高橋さんの子どもと孫は海外で暮らしていて、交流はごくたまにです。
リタイア後しばらくすると、「自分の存在意義はどこにあるのか」そう感じるようになったといいます。
そんな時に、高橋さんが始めたのが釣りでした。ボケ防止のためにも、たくさんある時間を使って何か趣味を見つけなければ……そう考えたといいます。始めると、釣りそのものより高橋さんを楽しませてくれたのが人との出会いでした。
釣具店に通ううちに、常連客である年配の男性たちと顔見知りに。彼らから「一緒に釣りに行かないか?」と誘われたことで、高橋さんは釣り仲間を得たのです。そして、釣りの後の食事や飲み会に参加するなど、充実した日々を過ごすように。それは決して悪いことではなかったのですが……。
お酒が入ると、つい「こう見えて部長だった」「部下からの信頼も厚かったんだ」と、過去の栄光について語ってしまう高橋さん。そのテンションのまま、「今日は俺に任せて」「多めに出すから」と、進んで支払いをしました。
そうしたことが数度続くと、高橋さんがすべて、あるいは多めに支払うことが当たり前になっていきました。周囲は「さすが!」「気前がよくて最高」と褒めてくれます。高橋さんは、その言葉を聞くと得も言われぬ満足感を感じたといいます。
次第に誘いは増え、週に何度も釣りに行くようになり、天候が悪いときには飲み会だけを開くことも。そのたびにかかる費用が積もり積もって、月々の支出がかなり増えていきました。
