さらなる高成長が予想されるインド保険市場。今後5年間の収入保険料平均増加率は、生損計10%、生保9.5%

さらなる高成長が予想されるインド保険市場。今後5年間の収入保険料平均増加率は、生損計10%、生保9.5%
(写真はイメージです/PIXTA)

近年、インドの保険市場は急成長を遂げています。同レポートによれば、G20諸国の中でも最も急速に成長する、とされてています。本稿では、ニッセイ基礎研究所の有村寛氏が、インドの保険市場について詳しく解説します。

世界におけるインド生保市場

急成長が予想されるインド生保市場だが、2023年収入保険料における世界のマーケットでの位置づけを示したのが(図表2)である。

 

2024年にSwiss Re Instituteが公表3した2023年の世界の生保収入保険料では、インドは世界7位となっている4(図表2)。

 

資料:スイス再保険「World insurance 2024」り。
(図表2)2023年収入保険料(生保)世界トップ10市場実績(単位;10億ドル) 資料:スイス再保険「World insurance 2024」より。

 

前掲のSwiss Re Instituteのレポートには、世界の生保市場におけるインドの順位についての将来予測は記載されていないが、昨年5月にアリアンツが公表したAllianz Global Insurance Report 2024によれば、2034年には、米国、中国・に続き、世界第3位となることが予想されている。

 

資料:Allianz Global Insurance Report 2024より。筆者にてユーロからドルへ換算。
(図表3)2034年各国の生保収入保険料(上位10か国、単位10億ドル) 資料:Allianz Global Insurance Report 2024より。筆者にてユーロからドルへ換算。

 

2022年3月に、新長官Shri Debasish Panda氏が就任して以来、インドの保険監督当局であるIRDAI(Insurance Regulatory and Development Authority of Indiaインド保険規制開発局)は、2047年までに、すべてのインド国民が適切な生命保険、医療保険、損害保険に加入し、すべての企業が適切な保険ソリューションによってサポートされる"Insurance for All"の実現を掲げ、実現に向けた規制改革の検討、実施がされてきたところである5

 

インド政府は、国民を経済的に豊かにするための重要なツールとしてデジタル技術に着目し、様々な分野でデジタル化を進めており6、2024年3月20日には、保険の購入、請求の決済、その他の機能などの保険サービスを提供するオンラインプラットフォームであるBima Sugamが設立される等、デジタル化の進展も著しい。

 

フィッチでは7、「インドにおける生命保険の成長は、生命保険商品のメリットに対する認知度の低さによって妨げられて」おり、「よりよい消費者教育が必要とされている」とされている。この課題が解決されれば、低コストのマイクロ保険や、携帯電話を通じての保険販売等により、生命保険は、低賃金層を含めた広大な未開拓層について、開拓のチャンスが到来する可能性がある、という。

 

一方、米国では、生保販売には「人によるコンサルが必要」と考えられており、インシュアテック等も、オンラインによるダイレクト販売からは撤退の方向にある、とされている8中で、インドのチャレンジングな取組みの行方は、どうなっていくのか。

 

著しい成長を遂げつつ、変容を続けるインド生保市場については、引き続き、注視していきたい。

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3 Swiss Re Institute 「World insurance 2024」。

4 なお、インドは、2022年の生保収入保険料でも世界第7位だった(Swiss Re Institute「World Insurance 2023」)。

5 安井義浩「2047年までに、すべての人に保険を(インド)-インドの保険監督当局(IRDAI)の検討状況を紹介」『保険・年金フォーカス』(2024年11月19日)
(https://www.nli-research.co.jp/files/topics/80258_ext_18_0.pdf?site=nli)
は、直近のインド保険監督当局局(IRDAI)の取組みについて紹介されているほか、Shri Debasish Panda氏が就任して以来のインドの規制改革の動きについては、以下の一連の中村亮一『保険・年金フォーカス』にて紹介されている。

「インドの保険監督規制を巡る動向-IRDAI による一連 の改革の状況(その1)-」(2022年11月9日)
https://www.nli-research.co.jp/files/topics/72907_ext_18_0.pdf?site=nli、
「インドの保険監督規制を巡る動向-IRDAI による一連 の改革の状況(その2)-」(2022年11月15日)
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=72997?site=nli、
「インドの保険監督規制を巡る動向-IRDAI による一連 の改革の状況(その3)-」(2023年2月3日)
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=73796?site=nli、
「インドの保険監督規制を巡る動向2023-IRDAIによる規制改革等の状況(その1)-」(2023年7月20日)
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=75471?site=nli、
「インドの保険監督規制を巡る動向2023-IRDAIによる規制改革等の状況(その2)-」(2023年7月25日)

https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=75570?site=nli

6 インドでは、官民あげてデジタル化に力を入れている。その背景も含め、インドにおける生保商品のオンライン販売の状況については、松岡博司「インド生保市場における生保・年金のオンライン販売の動向―デジタル化を梃子に最先端を目指す動き―」『保険・年金フォーカス』(2023年7月19日)にて紹介されている。
https://www.nli-research.co.jp/files/topics/75462_ext_18_0.pdf?site=nli

7  Fich Solutions Company,BMI「India Insurance Report Q2 2025」より。

8 小著「米国では、生保加入には「人によるコンサル」が不可欠だと考えられている-ニーズは高いが、実績はわずかなインターネット加入-インターネットを経由したダイレクト募集からは撤退の動き」『保険・年金フォーカス』(2024年11月29日)。
https://www.nli-research.co.jp/files/topics/80372_ext_18_0.pdf?site=nli

 

 

* 有村 寛「2024~2026年度経済見通し」、Weeklyエコノミストレター(2025/3/11)

 

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2025年04月08日に公開したレポートを転載したものです。

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