今週の注目点…日米の為替調整と「米国売り」の関係
ところでこの2点は、基本的には両立が難しいものでしょう。つまり、「米国売り」のリスクが残るなかで、日米交渉において円高・米ドル安リスクが高まった場合、「米国売り」の拡大が制御不能になる懸念があるからです。その意味では、「米国売り」のリスクがこの先も続くかが、日米交渉の円高リスクにも影響するのではないでしょうか。
この「米国売り」、つまり米国株と米国債、米ドルといった「トリプル安」、米金利の上昇にもかかわらず米ドル下落となった「悪い金利上昇」は、トランプ政権1期目、2018年にも見られた現象でした。そんな「悪い金利上昇」は、このときは1~3月にかけて2~3ヵ月続きました(図表3参照)。そういったことを参考にすると、今回の場合も「悪い金利上昇」、「米国売り」がもう終わったのか、まだ微妙ではないでしょうか。
もしも、これまで見てきたように「米国売り」のリスクがまだ完全に払拭されていないなら、そういったなかでの米ドル安・円高への誘導は、米ドルのコントロール不能な下落をもたらしかねない懸念があるのではないでしょうか。
一般的には、当初の予想以上に米ドル安・円高が広がり始めたのは、日米間の円安是正の可能性も一因との理解が多い気がしますが、私はむしろ「米国売り」のリスクに注意する必要があると思います。仮に日米が円安の是正を目指していたとしても、そういったなかで「米国売り」リスクが拡大し、円安是正の米ドル安・円高がコントロール不能のリスクが出てきた場合はいったん立ち止まる可能性があり、最近の状況はそれに近いのではないでしょうか。
これまで見てきたように、「米国売り」が再燃するリスクが払拭されるまでは米ドルの反発は限られ、下値が広がりやすい状況が続く可能性が高いのではないでしょうか。ただしここまで米ドル安・円高が続くなかで、為替市場のポジションは大きく米ドル売り・円買いに傾斜していると見られ、その修正が米ドル/円の下落の歯止め役となり、きっかけ次第では米ドル反発の後押し役になる可能性はあるでしょう。
ちなみに、CFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円ポジションは、15日時点で買い越し(米ドル売り越し)がこれまでの最高を大きく更新し17.1万枚と一段と拡大しました(図表4参照)。低金利の円といった意味では異例の大幅な買い越しであり、為替市場ではさらなる米ドル売り・円買い余力が限られ、きっかけ次第では米ドル買い戻しが広がりやすい状況が続いているという面はありそうです。以上を踏まえ、今週の米ドル/円は140~145円で予想したいと思います。
吉田 恒
マネックス証券
チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長
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