予備的遺言にしておく必要がある
相続させる人が遺言者より先に亡くなった場合に備えて、次に相続する人を指定しておく遺言を「予備的遺言」といいます。長女がいちばん年上だとしても、桃子さん夫婦が長女よりも先に亡くならないとも限りません。
そのため、次に相続する人や遺贈する人を決めておくと、そのまま遺言書を生かして手続きができるので不安がありません。
遺言執行者は相続人や遺贈を受ける人でできる
遺言執行者の要件は特に決まっておらず、弁護士、司法書士などの資格者でなくても誰でもなれるのです。相続人や遺贈を受ける人を遺言執行者に決めておくことでも問題はありません。専門家に依頼すれば報酬を払う必要がありますが、相続人や遺贈を受ける本人であればそうした報酬はなしに手続きできるため、親族間ではそのようにされる場合があります。
今回、長女が遺言書を作り直す際には、桃子さんや親族を遺言執行者にすることをお勧めします。
どうせなら、相続税も節税できたほうが安心
現在の姉の遺言書では自宅は桃子さんが相続することになっています。桃子さんは夫名義の家に住んでいますので、居住用の小規模宅地等の特例は適用できません。当然、桃子さんの夫も適用外です。また桃子さんの上の娘も夫婦共有の家があり、適用できません。しかし、桃子さんの下の娘は現在、独身で賃貸アパートに一人暮らしをしています。
小規模宅地等の特例を適用するという場合の選択肢は桃子さんの下の娘といえます。姉からすると、姪で3親等ですが、自宅の遺贈を受けると小規模宅地等の特例が適用できて、相続税が減らせます。
姉の財産は自宅と預金で約1億円ありますので、少しでも節税したいところ。特例が適用できれば相続税は4分の1に減らせます。
桃子さんにその説明をすると、ぜひそうしたいという返答。姉や家族も異論はないはずで、むしろ、最初の遺言書で司法書士からそうした話をしてもらいたかったと言っていました。
遺言書は作り直したものが有効になる
遺言書は作成した年月日の新しいものが有効になります。桃子さんの姉も再度、印鑑証明書を取得し、戸籍なども揃え、桃子さん家族も住民票などを用意する必要はありますが、作り直すことによって相続税を節税し、遺産分割協議などをしなくても使える有言所になるため、すぐに作り直しを決断されました。
なお、きょうだいしまいには遺留分の請求権がないため、姉の意思が実現します。
小規模宅地等の特例を受けられる人の要件とは
小規模宅地等の特例は、「被相続人の親族」が相続または遺贈により取得したものであればてきようできます。親族は、一般的には血統・婚姻によってつながる人々をいいますが、法律上は6親等内の血族、配偶者および3親等内の姻族をいいます。
配偶者、子どものいない桃子さんの姉からみて、桃子さんの娘は姪で3親等になり、要件の範囲内となります。
◇法定相続人の範囲
相続人 「血族相続人」 直系卑属(子や孫など)…第1順位
直系尊属(父や母など)…第2順位
傍系の血族(兄弟姉妹・甥姪など)…第3順位
「配偶相続人」 配偶相続人。
曽根 惠子
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®
株式会社夢相続 代表取締役
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp)認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
注目のセミナー情報
【海外不動産】12月18日(木)開催
【モンゴル不動産セミナー】
坪単価70万円は東南アジアの半額!!
世界屈指レアアース産出国の都心で600万円台から購入可能な新築マンション
【事業投資】12月20日(土)開催
東京・門前仲町、誰もが知る「超大手ホテルグループ」1階に出店!
飲食店の「プチオーナー」になる…初心者も参加可能な、飲食店経営ビジネスの新しいカタチとは?
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】
「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】
