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厚生労働省が集計した「ホームレスの実態に関する全国調査」
全国の市区町村が巡回による目視でホームレスの人数を調べ、厚生労働省が集計した「ホームレスの実態に関する全国調査」によると、全国のホームレスは2024年1月時点で2,820人だった。
2003年に厚生労働省が初めてこの調査を実施して以降、ホームレスの人数は「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」および「生活困窮者自立支援法」に基づく支援などの取り組みの成果により、減少傾向にある。また、最近のホームレスの動向やそれを取り巻く環境の変化等を踏まえ、2023年7月31日には、新たなホームレスの自立の支援等に関する基本方針が策定された。
「ホームレスの実態に関する全国調査」は最初の調査から4年後の2007年に2回目が実施され、以後毎年1月に実施されている。自治体の自立支援策の効果もあり、2007年では4年前から▲27%減少した。その後、リーマン・ショックの影響で2009年までの減少テンポは鈍った感じがあったが、2010年以降は景気の持ち直しもあり、順調に2024年まで減少してきた。最初の調査から21年後の2024年は2,820人と9分の1強まで減少した。
2024年1月「ホームレスの実態に関する全国調査」によると、なお、全国のホームレスの中で、東京23区(国管理河川(国土交通省調査)を含む)及び政令指定都市の割合は61%になる。このようにホームレスの多くは大都市で生活している。
ホームレスが確認された場所の割合は、「都市公園」25%、「河川」23%、「道路」24%、「駅舎」6%、「その他施設」22%となっている。「都市公園」、「道路」、「河川」の順だが、おおむね同じ割合と言える。
雇用環境の改善が、ホームレスの減少につながっている
東京都福祉局「路上生活者概数調査」によると、2024年8月時点での東京都のホームレスは588人だった。このうち、都・区市町村等の調査による人数は359人(23区342人、市町村17人)、国土交通省の調査による国管理河川の人数は、229人(23区196人、市町村33人)だった。2024年1月の調査結果と比べると、合計で36人の減少となった。
古くからデータがあるのは東京23区の国管理河川(国土交通省調査)を除くホームレスのデータで、東京都福祉局(2023年6月までは福祉保健局)によるこの目視の調査は、年に2回、冬期・1月(2007年までは2月)と夏期・8月に行われている。
東京23区の国管理河川(国土交通省調査)を除くホームレスの長期的な推移をみると、バブル景気崩壊により最初の調査である1995年から過去最高の1999年8月の5,798人まで増加した。その後2004年8月まで5,000人台の高水準で推移したあとで減少に転じ2024年1月は372人、2024年8月は342人と調査開始以降で最低となった。ピークの約17分の1まで低下してきた。
東京都によると、都と23区が共同で取り組んできた、ホームレス及びホームレスとなるおそれのある人を一時的に保護し、就労による自立と早期の社会復帰に向けた支援を行う自立支援センターの運営などの対策がホームレスの減少に寄与しているものと考えられるということだが、ホームレス減少の根底には、かつて5%台の高水準だった完全失業率が、現在2%台半ばまで低下していることに表れている雇用環境の改善が、ホームレスの減少につながっていると思われる。
宅森 昭吉
景気探検家・エコノミスト
景気循環学会 副会長 ほか