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会社の倒産によって自殺に追い込まれた家主
2025年4月。東京商工リサーチが公表したデータによると、2024年度の全国企業倒産件数は11年ぶりに1万件を超えた。負債額1,000万円以上の企業倒産は前年比12%増の1万144件。このニュースを見て、あの事故物件との出会いを思い出した。
倒産と自殺との関係は複雑で、原因は1つに特定できない。ただ経済的困難、特に中小企業経営者の事業不振や多重債務は、孤立や絶望感を引き起こし、精神的に追い詰められるケースが多い。あの我孫子市の物件も、まさにそうした背景のなかで生まれた事故物件だったのだと思う。
事故物件の価格
当時は事故物件に対する知識や情報も乏しい時代。物件は弁護士が仕切る入札により、柏の買取再販業者が市場価格の半額以下で購入していった。
しかし現在では、事故物件であっても立地や築年数、管理状態によっては市場価格に近い金額で売却できるケースも増えている。昨年扱った杉並区の物件は、孤立死のあとに特殊清掃を経て、市場価格の15%減で売却された。フルリフォーム後、さらに高値で転売されたという。
事故物件の記憶と、不動産の本質
我孫子市の物件を訪れたとき――あのときの感覚だけはいまもはっきりと身体が記憶している。物件の映像、匂い、光の角度、細部は朧げでも残っている。誰かの人生の終わりに触れたとき、人はなにを感じるのか。
事故物件に対して、怖い、気味が悪いという印象を抱く人は多い。正直、自分もそうだ。しかし、そこには確かに誰かが生きた痕跡がある。思い出しながらこの文章を書いているいまも、鳥肌が止まらない。
それでも、あの経験が自分を成長させたことは間違いない。だからこそ、不動産という仕事は、ただの“物の売買”ではなく、人の生き方や死に方に寄り添う仕事だと思う。倒産、自殺、事故物件。どれも社会の片隅に置かれがちなテーマだが、真正面から向き合わなければいけない現実でもある。
倒産件数が増え、インフレ、人手不足が進み、安定しているとは言い難い状況だ。不動産業者は、物件だけでなく、その背後にある人生の物語にも目を向け、そっと寄り添う存在でありたい。そう願って、この仕事を続けている。
柏原 健太郎
株式会社TBH不動産 代表取締役
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