倒産あいつぐ…かと思いきや、国内系ホテルはポジティブな捉え
この10年ほどで、東京にかぎらず、いや京都ではそれ以上に外資系ラグジュアリーホテルの開発があいついできた。コロナ禍でインバウンドは2020年から丸2年間が完全に落ちこんだが、23年からは急回復している。世界の金融誌や旅行誌での日本の旅行先としての評価はあいかわらず高いものがあり、日本食ブームとセットでますます注目されるようになっている。
そうした市場動向から、外資系のホテル運営会社のあいだでは、日本はまだホテル開発の余地ありという声が根強い。「ホテル戦争」というたぐいの煽情的な論調を好む日本のメディアは、外資系ブランドがつづけて参入してくるとすぐに国内系の倒産があいつぐかのような記事を書いて騒ぐのだが、実情はちょっとちがう。
外資系側は市場の飽和がまだ先とみているし、国内系もまたインバウンド旅客のあいだで認知度の高い外資系ホテルの集積が進めば、それだけ旅行目的としての認知度が高まり、ひいては自ホテルにも恩恵があるというポジティブな見方をするようにもなっている。ただし老朽化して陳腐化し、サービス改善も進まないようなところは退場を余儀なくされていく。それはいつの世でも仕方ないことだ。
米国、欧州、アジア勢力まで…続々参入する外資系ホテル
日本進出の外資系ホテルは、90年代にフォーシーズンズホテル、パークハイアット、ウェスティンが東京でほぼ同時期に開業して「外資系新御三家」などと呼ばれた。
ヒルトン、マリオット、ハイアットといった米国系メガグループとフランスのアコーによって占有されていた日本市場だったが、2000年代になるとマンダリンオリエンタル、ペニンシュラ、シャングリラといったアジア系のホテルも東京に入ってきた。日本はまだ平成不況にあえいでいたが、それらはインバウンド市場の成長を見越しての参入だった。
さらにこの数年では、タイのデュシタニ、シンガポールのカペラといった東南アジア系の高級ホテルチェーンが京都に進出してきた。シンガポール、タイ、マレーシア、インドネシアなど東南アジア諸国の訪日旅行者数は大きく伸びていて、その市場を狙っての参入であり、同時に東南アジアへ旅行する日本人客への販促拠点でもある。
国内系ホテルはもう米欧系メガグループとの競合だけでなく、アジアの勢力とも競わないといけない時代になっている。