米国経済:関税政策により製造業活動は縮小を示唆
全米供給管理協会(ISM)が公表した2025年3月のISM製造業景況指数は49.0(2月:50.3)と市場予想(49.5)を下回り、中立水準の50(景気拡大・縮小の分かれ目)を下回りました(図表1)。トランプ政権による課税賦課に伴うコスト上昇を回避するための駆け込み需要が一巡したことなどが製造業の景況感を押し下げた格好となりました。
項目別では、新規受注指数は1月に55.1と2022年5月以来の高水準を記録したものの、2月(48.6)に中立水準を下回り、3月には45.2へ一段と低下しました。輸出向け受注指数(2月:51.4→3月:49.6)や輸入指数(2月:52.6→3月:50.1)も揃って低下しており、総じてみれば、関税賦課を控えた駆け込み需要が一巡したと考えられます。受注指数の軟化を受けて、生産指数も2月の50.7から48.3へ低下し、中立割れとなりました。
そのほか、雇用指数は1月(50.3)に2024年5月以来の中立超えとなったものの、2月(47.6)に再び中立割れとなり、3月には44.7へ低下しました。トランプ政権による関税政策を巡る不確実性が高まるなか、需要の減少を見越して、企業は雇用拡大に慎重姿勢を強めている様子がうかがえます。また、価格指数は2月の62.4から3月に69.4へ大幅に上昇しており、関税政策がインフレを再燃させるリスクは一段と高まっています(図表2)。
トランプ政権の発足前は景気循環が持ち直しに向かう環境が整いつつあったものの、同政権が関税政策に動きだしたことで先行き不透明感が高まり、製造業活動は萎縮しつつあると考えられます。
米経済の先行き不透明感が高まる中で、先週は4日公表の雇用統計の結果を予想する材料として、JOLTS(雇用動態調査、米労働省公表)などの経済指標が公表されました。
2月のJOLTSによると、求人件数は前月比▲2.5%減の756.8万件と1月(776.2万件)、市場予想(765.8万件)をともに下回りました(図表3)。離職者数のうち、非自発的離職者数は前月比+6.9%増の179.0万人と1月(同+0.3%、167.4万人)から急増しました。
特に、DOGE(政府効率化省)により連邦政府の非自発的離職者数は2.2万人と1月(0.4万人)から急増し、2020年11月以来の高水準となりました。これに対して、転職などが中心の自発的離職者数は2月こそ前月比▲1.9%の減少となったものの、1-2月平均は2024年10-12月期対比で+3.6%とプラスに転じており、転職活動の動きが活発化しつつある状況が見て取れます。
JOLTS及び雇用統計を用いて、パウエルFRB議長が労働市場の需給の尺度として重要視する「失業者1人当たりの求人件数」を計算すると、1月の1.13件から2月に1.07件へ低下しました(図表4)。2024年6月以降、均衡点とも言える1.0件近傍の推移が続き、労働需給は概ね安定した状況となっています。
今回の結果は、労働市場が引き続き緩やかな減速傾向にあることを示しました。3月雇用統計の事前予想では、非農業部門雇用者数が前月差+14.0万人と2月(同+15.1万人)から伸びが小幅に鈍化し、JOLTSと同様、労働市場が漸進的に減速することが予想されています。
東京海上アセットマネジメント
※当レポートの閲覧に当たっては【ご留意事項】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『【米ドル円】東京海上アセットマネジメントが振り返る…4月初週の「米国経済」の動き』を参照)。
※本記事は東京海上アセットマネジメントの「TMAMマーケットウィークリー」の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が文章を一部改変しております。
※全文は「TMAMマーケットウィークリー」をご確認ください。
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