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舞台は大正時代、「鬼殺隊」として仲間とともに戦うストーリー
『鬼滅の刃』は、集英社の『週刊少年ジャンプ』2016年11号～2020年24号に205回にわたり連載されていた吾峠呼世晴の作品で、時代は大正時代の設定。鬼に家族を殺された少年・竈門炭治郎が、鬼にされた妹を人間に戻すべく鍛錬し、鬼殺隊として仲間とともに鬼と戦うストーリーだ。兄妹の絆、優しさ、勇気などが随所に盛り込まれ、登場人物の背景もしっかりと描かれている。
主人公が、死闘の末に倒した鬼の服を踏みつけ、醜い化け物として蔑む仲間に向かって、「醜い化け物なんかじゃない。鬼は虚しい生き物だ。悲しい生き物だ」というセリフなどは、読者の心を捉えたと言えよう。大ブームとなった中で、2020年5月に、桜が散るように連載が完結し話題となった。むやみに連載を引き延ばすことをせず潔く終了した感が強い。
『鬼滅の刃』の単行本は全23巻だ。2025年3月6日、MLBは東京での開幕シリーズを記念し、人気アニメ『鬼滅の刃』とのコラボレーション動画をSNSで公開した。ドジャースの大谷翔平、山本由伸、ベッツ、カブスの今永昇太、鈴木誠也、スワンソンが『鬼滅の刃』風にアニメ化され東京ドームで活躍するものだ。そのことを報じるスポーツ紙の記事の中で『鬼滅の刃』コミックス累計発行部数は1億5000万部を突破していると記された。
コミック、アニメ、映画も記録的ヒットを達成
第23巻の限定版を含む、初週売上は、史上最高記録の343.1万部であった。新型コロナウイルス流行年初年に当たる2020年オリコン年間コミックランキング作品別の期間内売上で8,234.5万部と作品別歴代年間最高売上となった。コロナ禍でステイホーム中に子供たちが読んでいた『鬼滅の刃』を、大人も読んだ家庭も多かったのではないだろうか。コミックを初めからすべて読んでも、20巻程度だと最初から読むのには適当な長さだったという面も、幅広いファンを作った一因だろう。さすがに人気作品でも100巻となると最初から読破するのに時間や費用がかかってしまう。
2019年にはufotable制作でテレビアニメ化され、物語の序章を描く第一期『竈門炭治郎 立志編』が放送されていた。『鬼滅の刃』を原作としたアニメの第一部の続編にあたる『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が2020年10月16日に劇場公開され、記録的なヒットとなった。公開から3日間で過去最高の46.2億円の興行収入を挙げ、日本の人口の約3％に当たる342万人の観客動員数となった。25日までの10日間の興行収入は107.5億円、観客動員数は798万人になった。公開10日間での100億円突破は、史上最速で、それまでの最速記録は、「千と千尋の神隠し」（2001年、最終興行収入308億円）の25日間だった。2020年の興行収入でも断トツの1位だった。
新型コロナ感染防止対策に気を配り、観客の不安解消にあたった映画館の関係者の努力も大きいだろう。コロナ禍で邦画・洋画とも新たな作品供給が難しい局面でハリウッド映画が不在のなか、シネマコンプレックスでスクリーン数と上映回数を最大限まで引き上げた戦略も奏功した。
新型コロナウイルスの影響で第3次産業活動指数の映画館（ウエイト1万分の2.4）の季節調整値（2015年＝100、2025年3月時点）は2020年5月に1.3まで落ち込んだのを底に停滞が続いた。しかし『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が10月16日に公開されたことで映画館は息を吹き返し、10月分は100まで改善した。音楽・芸術等興行の10月分は27.4の低水準と依然停滞していたことと、対照的だった。
（出所）経済産業省
『鬼滅の刃』を原作としたアニメの第一部の続編にあたる、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が10月16日の劇場公開から10日間での興行収入は107.5億円となった。公開10日間での100億円突破は、史上最速記録だ。12月13日には、公開9週で302.8億円と最速で300億円を突破した。歴代最高の「千と千尋の神隠し」が300億円を超えるには37週かかったことに比べて異例の速さだった。12月27日には324.7億円となり、「千と千尋の神隠し」の316.8億円を上回り歴代最高収入となった。最終的に日本国内での興行収入は404.3億円に達した。また全世界の興行収入は517億円に上り、全世界で観客4135万人を動員した。
コミックは史上初の「1位～22位独占」達成の快挙
映画のヒットは原作コミックにも跳ね返り、2020年11月2日付（10月19日～25日）のオリコン週間コミックランキングでは『鬼滅の刃』の既刊全22巻が1位～22位を独占。2020年2月24日付、5月11日付で記録した「1位～19位独占」を上回り「史上初の1位～22位独占」を達成する快挙を成し遂げた。12月4日に発売されたコミック『鬼滅の刃』最終巻の23巻の初版発行部数が395万部になり、この時点で、シリーズ累計発行部数（電子版を含む）は1億2,000万部突破となった。
（出所）オリコンHP
続編のアニメも、2025年7月公開予定
関連の子ども向け玩具・ゲームだけでなく、コラボ商品が、食品、飲食店、コンビニ、公共交通機関、郵便会社などの様々な業界から相次いで販売された。売上も好調で、新型コロナウイルスの感染拡大で低迷する消費の押し上げに寄与した。
また、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の主題歌であるLiSAが歌った「炎」が第62回日本レコード大賞を受賞した。2020年のレコード大賞では『鬼滅の刃』が「特別賞」も受賞した。「鬼滅ブーム」だった年を象徴する2020年の締めくくりになった。
テレビアニメ第2期として『無限列車編』の再編集版とその続編となる『遊郭編』が2021年10月から2022年2月まで、第3期として『刀鍛冶の里編』が2023年4月から6月まで放送された。第4期として2024年5月から6月まで『柱稽古編』が放送された。
その続編となる劇場アニメ『劇場版「鬼滅の刃」無限城編』が三部作で制作されることが決定している。『劇場版「鬼滅の刃」無限城編』第1章が2025年7月18日に公開されることになった。
出所：興行通信社
宅森 昭吉
景気探検家・エコノミスト
景気循環学会 副会長 ほか
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