トランプ関税を巡る動き
米国のトランプ大統領は2025年2月1日、メキシコとカナダに対して25%の関税、中国に対しては10%の追加関税を課す大統領令に署名しました。その後、メキシコとカナダに対しては関税発効の1ヵ月間延期やUSMCA*対象製品の4月2日までの適用除外を発表するなど譲歩を見せた一方、中国に対しては予定通り2月4日から追加関税を発効しました。これに対し、中国政府は即座に報復措置を発表し、米国からの石炭と液化天然ガスに15%の関税、原油、農業機械、大型エンジン車などに10%の関税を課しました。
(*自由貿易協定「米国・メキシコ・カナダ協定」)
その後トランプ大統領は、すべての国を対象に鉄鋼・アルミニウムに25%の関税を課すと発表しました。これは第1次トランプ政権下に、日本を含む主要国・地域から輸入される鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の関税を課したものの、実際には適用除外措置が多く、それらを廃止して関税の実効性を高める狙いがあります。
こうしたトランプ政権の関税政策により、米国経済や金融市場に対する不透明感が強まっています。
トランプ関税の狙い
トランプ政権の関税政策にはいくつかの狙いがあります。まずは、①貿易赤字の縮小と②製造業の強化です。
トランプ大統領は米国の貿易赤字を問題視しており、関税を強化し製造業の国内回帰を促すことで貿易赤字を縮小するとともに雇用を増やし、米国を再び強国にすると主張しています。そうした背景から、輸入相手国上位のメキシコ・中国・カナダを最初のターゲットにしたと見られます。また、トランプ大統領は、所得税減税の延長や法人減税などを打ち出しており、③関税収入をその財源に充てると考えられます。加えて、不法移民や薬物の流入対策を条件に、メキシコとカナダに対しては関税を1ヵ月延期するなど譲歩の姿勢を見せており、④外交の交渉材料として用いる様子も見受けられます。
