改革から約20年後の現在に語る、飲食業マネジメントの難しさ
飲食業のマネジメントは決して簡単ではありません。性別だけでなく、性格や考え方まで異なるさまざまな人々が集まり、一つのチームを作り上げる必要があるからです。
私がこの会社でマネジメントを始めて約20年が経ちますが、実に多種多様な人材と関わってきました。特に当社では、主にアジアから積極的に人材を受け入れています。彼らの個性豊かな背景と価値観は、私自身の偏見や先入観を何度も覆してきました。各人が持つ多様な長所が会社に新たな活力をもたらし、業務の幅も大きく広がっています。
では「飲食店に集まってくる多種多様の人材をうまく使いこなせている経営者はいるか」と問われると、残念ながらこの業界にはあまり多くはいないというのが、正直な私の意見です。
とはいえ私が尊敬している経営者はもちろん数多くいます。接客業にまで領域を広げたときに浮かんでくる優れた経営者は、星野リゾート社長の星野佳路さんです。星野さんは慶應義塾大学を卒業後、アメリカのコーネル大学ホテル経営大学院の修士課程で学んでいます。このホテル経営大学院は、ホスピタリティ業界に関する教育では世界トップレベルとして知られています。
コーネル大学の何がすごいのかといえば、接客業を一つの学問体系としてカリキュラム化している点です。ここで学べるのは単に個人による「おもてなし」レベルの話ではなく、組織全体として「おもてなし」を実現するために必要な要素が網羅されたトータルな学問体系です。
残念ながら日本にはまだ、このコーネルのような接客に関する学びを得られる大学はありません。
ちなみに星野さんはコーネル大学での学びを、体系的かつ再現性の高い内容になっていると評価しています。私はこの「再現性」というポイントが重要だと考えています。
よく誰かの自叙伝などで『◯◯の成功秘話』『これだけやれば成功する、◯◯のやり方』などとタイトルのつけられた本を見かけます。しかし、その手の本に書かれている内容には基本的に再現性がありません。あくまでも◯◯さんが、特定の状況におかれたときに成功した内容が書かれているに過ぎないのです。
これに対してコーネル大学では、数多くの成功事例を分析、そのエッセンスを抽出したうえで体系立てているという特色があるので学問として成立しています。すなわち学べば学んだだけの価値を得られるのです。
ただし成功ではなく失敗からも多くの学びがあるはずです。だからこそ私は経営者の失敗を学ぶために銀行勤めを選んだのです。
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中原 誠
株式会社麺食 社長
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