フィリピン中央銀行「政策金利据え置き」を決定
フィリピン中央銀行(BSP)は2月13日の会合で市場の予想を覆し、政策金利を5.75%のまま据え置きました。これはBSPが昨年8月に利下げを開始して以来、3会合連続で利下げを行ったあとの決定となります。BSPのレモロナ総裁は、リスクに備えるため、今年は合計50ベーシスポイント(bps)の利下げを実施する可能性があると述べており、前半と後半にそれぞれ25bpsずつ引き下げる見通しです。
フィリピン経済はトランプ大統領の関税政策の影響を受けにくいと指摘されています。フィリピンの対米輸出は米国の輸入全体の1%にすぎないため、影響は限定的であるということです。さらに、フィリピン経済は主に国内消費に依存しており、トランプ氏の保護主義的な政策による影響は小さいといいます。
しかし、トランプ大統領が発表した自動車、半導体、医薬品の輸入関税政策は、世界経済に一定の影響を及ぼす可能性があります。さらに、移民政策の強化は、海外フィリピン人労働者(OFW)からの送金に影響を与える可能性もあるでしょう。現在、フィリピン人の海外からの送金の約40%は米国からのものです。送金が大幅に減少すれば、投資家の信頼感が損なわれる可能性があります。
一方で証券取引税の引き下げ提案などの市場改革も、株式市場の活性化に寄与すると期待されています。さらには、フィリピンが最近、金融活動作業部会(FATF)の「グレーリスト」から除外されたことを受けて、ヨーロッパの投資ファンドが再びフィリピン市場に戻る可能性が高いとみられています。
フィリピン中央銀行(BSP)は、ペソを一定程度減価させる余地があり、これにより輸出と投資の流れを支援できる可能性があるという見方があります。HSBCは、より競争力のあるペソは輸出と海外直接投資(FDI)に利益をもたらすため、BSPはより防御的でない外国為替(FX)政策に移行する余地があると述べています。また、フィリピンは米国政府からの貿易関係や通貨政策に関する厳しい監視を受けていないため、BSPが米ドルの下落時に外貨準備を積み増し、ペソの過大評価を是正することが可能であるとしています。
HSBCは、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策から独立することでペソの減価を容認することにはメリットがあると指摘しています。貿易や投資の不確実性が成長に影響を与えるなか、より競争力のある通貨は急成長するサービス輸出を後押しし、経済にとってプラスに働く可能性があると分析しています。
また、HSBCはBSPが外国為替の変動リスクを抑えることから、成長促進へと焦点を移す可能性があると見ています。しかし、この移行は年の前半には起こらず、後半にかけて徐々に進むと予想しています。金利と為替政策が連動する中で、フィリピンと米国の政策金利差が縮小することで米ドル高・ペソ安が進むと見られ、BSPは米ドル売却による市場介入を弱める可能性があるとしています。
