25年前に夫婦で日本を離れ、海外で安定した暮らしを送る義雅さん。しかし、ふとしたきっかけで日本の相続税の適用範囲を知り、不安を感じるようになりました。果たして、日本に住んでいない自分たちの財産にも課税されるのか? そして、息子が日本で生活する場合の影響は? 相続実務士の曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が詳しく解説します。
日本を脱出 海外生活25年が過ぎた
義雅さん(52歳)は大学卒業後、語学力を生かして海外の仕事をしたいと思い商社に入社。食材を現地で買い付け、輸入する部署で働いていました。
職場の同僚と結婚もして、充実した生活でしたが、海外の環境や働き方を知るほど、日本よりも海外で働きたいという思いが強くなったそうです。妻に相談したところ、賛成をしてくれたので、27歳のときに商社を辞めて、二人で海外生活を始めました。
仕事はこれまでの経験を生かして、すぐに見つけることができて困ることはありませんでした。
それから25年。現地で子どもにも恵まれて、家族3人で穏やかな生活ができています。仕事も順調で、いまでは独立して会社経営をしているといいます。
そんな義雅さんから、相談したいとのメールが届きました。
日本の相続税を払うのか?
義雅さんからの質問メールは次のような内容です。
「私と妻は移住後25年を経過し、現地生まれの息子は19歳で一緒に暮らしております。彼が将来日本で勤務し、その間あるいはこちらに帰国後に、被相続人が死亡した場合でも、日本の相続税は現地の財産に適用されるのでしょうか。
正直申しますと、現地で暮らし、築いた財産に日本の税法が適用されることに不愉快極まりません。日本の税法が私たちの状況にどう影響し、その影響を未然に防ぎたいのです。
海外移住者として、より詳細な情報あるいはご助言をいただきたいのです。今後どのような手続きを行えば、私たちの状況への的確な情報を取得することができるでしょうか。」
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®
株式会社夢相続 代表取締役
一般社団法人相続実務協会 代表理事
一般社団法人首都圏不動産共創協会 理事
一般社団法人不動産女性塾 理事
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書86冊累計81万部、TV・ラジオ出演358回、新聞・雑誌掲載1092回、セミナー登壇677回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2025年版 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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