無理のない返済計画のはずが…想定外だった「入居者の死」
マンションを購入した義男さんは、60歳を過ぎて収入が減っても、賃料収入でカバーするなどして問題なく返済を行っていました。
しかし、マンションを購入して15年ほどたったある日、想定外の事態が起きます。アパートを貸していた住人が孤独死してしまったのです。高齢で身寄りのない人だったため、発見されるまでに数日経過していました。
当然、部屋の掃除や消毒、遺品の片付けなどの費用は連帯保証人が支払うことになっていますが、亡くなった人は子どもを連帯保証人としていたものの相続が放棄されたため、義男さんが支払うことに。原状回復までにかかる費用が320万円もかかるなど、予想外の費用がかかる事態になってしまったのです。
さらに、孤独死があった物件ということで、その部屋への入居希望者は現れません。そればかりか、他の物件に引っ越す人もでてくるようになり、毎月30万円あった家賃収入は一気に10万円に減ってしまいました。
65歳から年金生活となり、年金収入は夫婦合わせて月25万円です。マンションのローンを返済すると残りは9万円。それに家賃収入10万円を加えた19万円で生活していかなければなりません。
そして、その後も賃貸物件の修繕費や購入したマンションの管理費の値上げなどが続きました。そうした出費をカバーするため、65歳時点では貯蓄1,000万円と退職金の2,000万円合わせて3,000万円あったものの、それを切り崩しながら生活していくことに。最終的には総資産額が1,000万円程度にまで減少していったのです。
修繕費や管理費のさらなる値上げなどが予想されることからも、70歳を過ぎたあたりで、義男さんはマンションを売却して残りの住宅ローンを返済し、自分が保有している賃貸アパートで暮らすことを決意しました。
そうすれば、なんとか生活はしていけるだろう。そう思っていましたが、それもうまくはいきませんでした。マンションは築20年以上経っているため、思ったような金額では売れず、ローンが残ることになってしまったのです。
そのため、貯蓄から残債を返済しなければならなくなり、貯金残高は200万円まで減ってしまいました。ローンの返済は逃れたものの、貯金の200万円が近いうちに底をつくことは目に見えています。
53歳での購入時には問題なく支払えると思っていた住宅ローンの返済が、70歳を過ぎた義男さんを追い詰めていったのです。
