父からの同居提案…息子の決断
(息子・直哉さんの視点)
父の提案はこうでした。父が住むマンションを売り、売却額の一部を使って戸建てを買い、同居するというのはどうか。1部屋もらえればそれでいい。自分が死んだ後は、皆で広々使えるぞ。こんなことを頼むのは人生最初で最後だ……。
直哉さんにとっては思わぬ話でした。一人暮らしをする父が心配ではありましたが、まさか同居を提案されるとは。
直哉さんが購入しようとしていた中古マンションは3,500万円ほど。自身の年収は500万円、妻はパートで100万円程度。子供の教育費や自分の年齢を考えれば、大きな負担を抱えたくないと、いうなれば妥協の上での選択でした。
父のマンションは古いものの、立地や住宅価格上昇の恩恵で2,500万円以上で売れる見込みとのこと。そこから資金を回してもらえば、新しく広い家に住むことができます。マンションではなく戸建てという選択肢も、小さな子どものいる直哉さんには魅力的でした。
父の年金は月15万円。自分の生活費や医療費はそこからきっちりと払うという話。同居において金銭的な問題はなさそうでした。
しかし、悩んだ直哉さんに対して、妻は徹底的に反対。どんなに狭かろうが汚かろうが、自分たち家族だけで暮らしたいと強く訴えてきました。父の一人暮らしのサポートは快くしてくれたものの、同居はどうしても受け入れられないとのことでした。
父なりに勇気を出して、プライドも捨ててのお願いだったことは想像がつきました。しかし、自分の家庭より大切なものはないと考え、率直に断りを入れた直哉さん。
父は静かに受け入れました。直哉さんは罪悪感を感じましたが、話は意外な方向に落ち着くことになります。
