税務署は“取るだけ”じゃない?…税制改革のカギだった「給付付き税額控除」の知られざる真実【弁護士が解説】

税務署は“取るだけ”じゃない?…税制改革のカギだった「給付付き税額控除」の知られざる真実【弁護士が解説】
画像:PIXTA

税金の仕組みは複雑で、私たちの生活に予期せぬ影響を与えることがあります。特に、税制に関する誤解や隠されたからくりに気づかず騙されてしまうことも。本連載は、弁護士の三木義一氏の著書『まさかの税金──騙されないための大人の知識』(筑摩書房)から抜粋・編集した内容をお届け。三木氏は、2019年から東京新聞の木曜朝刊『本音のコラム』欄を担当し、税制や社会問題を鋭い視点で論じています。軽妙な語り口で解説する「税法のご隠居」の税金問答は、制度や権力の闇に鋭くツッコミを入れるスタイルが特徴です。同書では、コラムの一部を抜粋し、さらに深掘りした内容を収録しています。今回は、税務署が「税を取る」だけでなく、低所得者に給付を行う仕組みとして構想された「給付付き税額控除」と、その制度が実現しなかった背景について解説します。

税務署は給付もする?

家にこもって漫画『夏子の酒』(尾瀬あきら作)を読み直しながら吟醸酒。良い気持ちになると、「天国よいとこ一度はおいで、酒はうまいしねえちゃんはきれいだ、ワーワー」(ザ・フォーク・クルセダーズ「帰って来たヨッパライ」)なんて口ずさんじゃう。古いね、どうも。ウィッ!

 

すったもんだのあげく一律10万円給付が決まったが、いつ実施するんだろう。すでにマイナンバーがあるのだから、番号と口座を税務署に通知して、すぐ振り込んでもらえばいいのに。

 

元々、あの番号制度は民主党政権の給付付き税額控除制度、つまり税務署が低所得者に給付をする制度と一体のものだった。税務署は取るだけではなく、給付もするのだ。消費税を徴収するが、消費税額控除を通じて低所得者には消費税負担分を給付する。こうして税金がみんなに役立つと実感してもらうものだったんだ〜。

 

そうしておけば、今ごろはマイナンバー制度と口座を紐付け、政府が10万円支給を決断したら、すぐ各自の口座に10万円が税務署から支払われ、「税務署よいとこ、一度はおいで、金はくれるし……」なんて歌われていたかもねー。ウィッ!

 

政府が国民のための政治をしている実感がないから、右も左も、富者も庶民も番号嫌いが多い。でもね、番号は使い方次第で、マ〜イイナンバーにもなるんだよね〜。ウィッ!

 

(2020・4・23)

消費税の逆進性と“給付付き税額控除”の考え方

自民党政治と民主党政治の違いは、税制面で見ると、給付付きの税額控除を前提として、税制・社会保険料の一体的調整を目指すか否かだったように思われる。

 

消費税が税収の第1位になることを前提とすると、どうしても逆進性が問題になる。その逆進性を解消するためには、これまでの研究や実施例から軽減税率が意味のないことはすでに明らかになっており、税制全体の中で調整する場合は、給付付き税額控除しかないと思われていた。そこで、民主党はこの方向を採用しようとした。

 

これは、簡単に言うと、健康で文化的な最低限の生活にかかる消費税を所得税額から控除し、その差がマイナスになる場合には給付し(例えば10万円)、まず未納の社会保険料等(−7万円)に充当し、さらに残りがあれば給付(3万円)していこうとするものだった。税務署はもはや税だけを対象にするのではなく、保険料も扱い、どちらも徴収し、必要な場合には給付もできるようにしていこうという構想であった。

 

しかし、そのためには、各個人の所得の正確な把握が必要なので、番号制度を導入して、できるだけ正確な所得情報が得られるようにしたかったわけである。この仕組みは政府を信用していない人たちや富裕層には嫌われる。自民党議員やその支持層は富裕層だから、この方向は好まない。何度も番号制度を潰してきている。政権が自民党にひっくり返ってからのマイナンバーは与党の体質がよく出ている。この制度の前提には政府への信頼が不可欠である。

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三木 義一

弁護士

青山学院大学名誉教授

 

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三木 義一

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