トランプ政権が最優先にするものはなにか?
筆者は「トランプ政権は米国債やドルの信認を維持することを最優先に考えている」と捉えています。こういうと、「それは、米国のこれまでの政権も同じじゃないか?」と思われるかもしれません。
筆者の感覚は少し異なります。「(自身の第1次政権を含む)これまでの政権の政策によって、困難な立場に追い込まれているのがトランプ第2次政権ではないか」と筆者は感じています。
議論を呼ぶところですが、一部の人たちは「過去数十年の政権が最優先にしてきたものは、自分たちとその取り巻き、およびその背後にいる者たちの権益を拡大することだった」と主張します(→加えて、一部の人は、米国だけではなく、日本もEUもそうだと主張します)。たとえ、そのことが米国債やドルの信認を犠牲にすることになったとしても、です。
実際、米国の財政赤字は拡大する一方であり、所得や富の格差も同様です。
もちろん、彼らは米国債やドルの信認が落ちていくことを黙って眺めていたわけではありません。これも議論を呼ぶところですが、彼らは(あいかわらず財政赤字には手を付けないものの)「ときに、自ら他国の財布に手をつっこむことで米国債やドルを支える手立てを打ってきた」と一部の人たちは主張します。
こういうと「財政赤字でもドルは強いじゃないか?」と言われるかもしれません。そんなことはありません。
米国は高いインフレに見舞われており、ドルは、対モノやサービスでは大きく下落しています。対ゴールドでもそうです。
米ドルが対主要国通貨・不換紙幣で強い理由は、
1. 当局が金融と規制の緩和姿勢によって金融市場の投機を促している、またはこれを支えている(≒流動性/モラルハザード/リスクテイク/金利差相場である)、
2. ロシア=ウクライナ戦争が、日本やEUなどの先進国に対して、米国の覇権・軍事力・ドルへの依存・従属を強めている(→たとえば、欧州は米国産の天然ガスに依存している。日本も今後そうなることが先の日米首脳会談で確認された)、
3. プラットフォーマーが米国にしかない(→そのようにプラットフォーマーは巨大化してきた)
といったことがあるでしょう。もちろん、(トランプ第1次政権を含む)これまでの政権のように、トランプ氏も自らや自らの周辺の権益を優先することが全くないとは思いません。
ただ、大幅に拡大する財政赤字と公債残高のファイナンスを他国に依存する現状を踏まえれば、トランプ政権は米国債やドルの信認の維持に忙殺されるリスクがあるでしょう。
他方で、たとえば、今般のUSAID(米国国際開発局)の業務停止や、今後のロシア=ウクライナ戦争の停戦のように、政権が求める政策が財政赤字の削減や、(国家と市民を犠牲にする)既得権益の打破に資するといったことはあるでしょう。こうした点では「財政再建、望むところだ!」といった具合かもしれません。
重見 吉徳
フィデリティ・インスティテュート
首席研究員/マクロストラテジスト
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