高齢化が進んでひとりで暮らす高齢者が増えれば、「孤独死」の件数も増加することが予想されます。自らが経営する賃貸住宅で「居住者」が亡くなっていることが判明した……というケースも、決して他人事ではありません。そこで本稿では、花原浩二氏、木下勇人氏、井上幹康氏の著書『不動産オーナー・管理会社のための 事故物件対応ハンドブック』(日本法令)より、賃貸住宅で居住者が亡くなっていた場合の対応方法について詳しく解説します。
手順を間違うと大変なことに…優先すべき「対応」と注意点
② 相続人と連帯保証人の対応
(ⅰ) 死亡届と葬儀
死亡診断書や死体検案書を受け取ったら、役所へ持参して死亡届を提出します。死亡届は、基本的に「死亡の事実を知った日から7 日以内」に提出しなければなりません。孤独死の場合、死後数日が経過してから連絡を受けるケースも多く、死亡診断書を書いてくれる医師を探すのに難儀されるケースも多々あります。できるだけ急いで対応しましょう。
(ⅱ)部屋の清掃
特殊清掃を行わずに事故物件をそのまま放置してしまうと、発生した悪臭や害虫によって近隣住人に被害が及ぶ可能性があります。そうなると近隣住人から嫌悪されてしまい、賃貸人(大家)や不動産管理会社に苦情が入ることもあるでしょう。
苦情が入ったままの状態で物件の賃貸や売買を進めても、近隣住人から嫌悪されている物件に住みたいと考える人は多くはいませんので、仮に契約できたとしても、借主が住んでいる物件の影響で、近隣住人と上手く付合いができなくなり、すぐに退去してしまう可能性があります。また、特殊清掃を入れなかったことが原因で退去した場合、入居者から訴訟を起こされる可能性も考えられます。
③ 特殊清掃
孤独死した場合には部屋の清掃をしなければなりませんが、清掃の際には細菌感染する可能性もありますし、消臭や消毒なども行う必要があり、相続人や賃貸人が自分で対応するのは困難となるでしょう。通常は「特殊清掃業者」という専門業者を手配する必要があります。特殊清掃業者は専門の装備を備えたうえで、特殊な薬剤などを使って消臭、消毒、清掃をしていきます。
(ⅰ) 特殊清掃の内容
- 遺体によって発生した汚れや悪臭の清掃および消臭
- 室内の消毒
- 室内にわいている害虫の駆除
- 遺品整理および廃棄物の撤去
(ⅱ) 特殊清掃の費用相場目安
④ 賃貸借契約の清算
亡くなった方が賃貸住宅を借りていた場合、賃貸借契約の清算も行わなければなりません。滞納家賃があれば、相続人にも法的な支払義務が及びます。ただし保証会社や連帯保証人がついていれば、支払ってもらえる可能性があります。原状回復については、特殊清掃業者に依頼して清掃をして明渡しをしましょう。賃貸人(大家)がフルリフォームを希望する場合、費用については基本的に相続人が負担する必要はありません。
⑤ 遺品の受取り
部屋の中に遺品が残っていた場合、物件を明け渡さなければならないので、そのままにしておくことはできません。持ち帰って遺品の整理をしましょう。
マークスライフ株式会社
代表取締役
1977年、兵庫県豊岡市生まれ、流通科学大学情報学部卒業。阪神・淡路大震災の経験から地震に負けない家づくりをしたいと大和ハウス工業入社。2011年横浜支社分譲住宅営業所所長。2016年10月、増え続ける空き家問題を中心に、世の中の困りごとを不動産の可能性を追求することで解決したいと独立。事故物件のイメージアップや高額買取りへの挑戦を通じて事故物件マーケットを構築する「成仏不動産」、葬儀を儀式のビジネスから総合エンディングビジネスへと転換する支援サービス「葬祭事業者サポートサービス」など複数のサービスを展開。日本国内のみならず海外からも数多くの取材を受け、不動産業界の革命児として注目を浴びている。
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連載不動産オーナー・管理会社のための事故物件対応ハンドブック
相続・事業承継専門『税理士法人レディング』 代表
税理士
公認会計士
宅地建物取引士
1975年、愛知県津島市出身。大学時代に宅建、不動産鑑定士を取得。28歳で公認会計士試験に合格し、「監査法人トーマツ」名古屋事務所に入所。上場企業級の非上場会社オーナーファミリーの事業継承対策に従事。約5年勤務の後、33歳で独立し、名古屋で公認会計士木下事務所・木下勇人税理士事務所を開設。翌2009年に、相続・事業承継専門の税理士法人レディングの代表となる。2017年、東京にも事務所を開設。現在、全国の税理士向け、保険募集人向け、不動産事業者向けなど、相続を取り巻くプロ相手に年間150回の研修講師をしながら、相続に関する情報を発信している。不動産鑑定士第2次試験合格者。AFP資格認定。東京税理士会 京橋支部所属。
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税理士・不動産鑑定士
税理士法人トーマツ(現デロイトトーマツ税理士法人)にて、東証一部上場企業含む法人税務顧問、税務調査対応、組織再編、IPO支援、M&Aの税務DD業務、税制改正セミナー講師、財産評価を中心とした資産税実務を経験。退職後、2018年7月に税理士として独立開業。非上場株式や不動産の評価業務、中小企業や不動産オーナーの事業承継コンサルティング業務を得意とする。税理士向けセミナー講師や執筆活動も行っており、税理士からの相談実績も多数。著書に『税理士のための不動産鑑定評価の考え方・使い方』(単著・中央経済社)がある。
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