日本企業の競争力低下の原因を読み解く4つのキーワード
電機産業においては、日本からアジア各国・地域への直接投資が拡大する中、日系企業との提携等を通じて現地企業が技術力を高め、消費者のニーズに沿ったコストパフォーマンスに優れる製品を供給するようになったのに対し、日本企業の多くは新たな成長分野でのコア・コンピタンスを確立することができず、事業の撤退やアジアの競合企業への事業の売却、技術者の流出(藤原綾乃『技術流出の構図:エンジニアたちは世界へとどう動いたか』白桃書房、2016年)など、負の連鎖に陥った。
部品や材料の生産では依然として競争力を維持している日本企業も多いが、全体としてみると衰退が著しい。半導体については、1988年頃には世界市場での日本企業の売上高シェアが50%を超え、世界ランキングのトップ10社のうち6社が日本企業であったが、日米半導体協定の影響などもあり、近年では日本企業のシェアは10%程度にまで低下し、トップ10社にも含まれていない。
半導体製造装置のような複雑度の高い製品では日本が比較的高いシェアを維持してきたが、ここでも国際的な競争激化にさらされている。また、中間財の供給は海外の最終財供給者の戦略変更等に振り回されるというリスクにも直面する。
一方、自動車については、日本のメーカーは海外生産を拡大しつつ、「すりあわせ」と呼ばれる垂直統合型のものづくりに強みを発揮し、裾野の広い国内の関連産業とともに国際競争力を維持してきた。
ただし、この分野においてもCASEと呼ばれる技術革新やMaaSの実装が進んでいるほか、各国における脱炭素化に向けた動きが目まぐるしく変化するなど、大きな変革期を迎えている。
コモディティ化
市場投入時には高付加価値だった商品について、他社が参入し、普及が進むにつれ、性能やブランド力などについて競合商品間の差がなくなり、価格競争に陥ること。
コア・コンピタンス
他社に比べ強い優位を持ち、その企業の競争力を支える分野のこと。
CASE
Connected(コネクテッド)、Autonomous/Automated(自動化)、Shared(シェアリング)、Electric(電動化)といった領域での自動車の技術革新のこと。
MaaS
Mobility as a Serviceの略であり、公共交通やそれ以外の移動サービスを組み合わせて検索・予約・決済等を一括で行うとともに、交通以外のサービス等との連携により、移動の利便性向上や地域の課題解決にも資するもの。
