日本企業の対外直接投資の拡大
対アジア向けの産業内貿易の大幅な増加の要因として日本企業の対外直接投資が挙げられる。対外直接投資とは、企業が海外で工場や支店などの現地法人を設立・拡大したり、現地企業の経営に関与するために株式を取得したりすることを指す。
国内工場で部品から最終品まで一貫生産した上で輸出するのではなく、外国の拠点にそこに適した生産工程を分担させることで、全体の生産費用の削減や、外国の消費者の嗜好に応じた商品の生産が可能となる。
日本企業の海外進出の状況をみるため、まず対外直接投資(フロー)の対GDP比の推移をみると、1980年代の後半に大幅に増加、その後一旦低下したものの、2000年代に入り再び増加に転じ、特に10年代に著しく増加している(図表)。
投資残高を地域別にみると、北米(2023年のシェアが35.3%)、欧州(同27.4%)、アジア(同26.1%)の3地域を中心に分布している。業種別では製造業が約37%、非製造業が約63%となっており、製造業では化学・医薬、輸送機械器具、食料品、電気機械器具、一般機械器具などが、非製造業では金融・保険業、卸売・小売業、通信業などが大きくなっている。
また、製造業について、日本企業の海外生産比率の推移をみると1990年の6.4%から上昇を続け、2022年度には27.1%に達している。海外進出の拡大は、国内の生産を減少させる側面(輸出代替効果、逆輸入効果)と増加させる側面(輸出誘発効果)があるが、グローバル・サプライチェーンの構築が進む中、日本以外からの中間財の調達が増大し、輸出代替効果等が輸出誘発効果を大幅に上回っていることがデータからも確認できる。
日本企業の海外直接投資はより積極化
日本企業は北米、欧州、アジア地域への直接投資を拡大してきた。このうち電機産業は、低廉な労働力が豊富なアジア諸国等に欧米輸出向け生産施設を移転するなど、早くから海外進出を開始した。また、1985年のプラザ合意後や2010年代の円高期に日本企業の海外直接投資はより積極化した。
コモディティ化の進んだ製品の生産等を労働費等のコストの低い場所に移管したり、市場により近い場所で現地のニーズに合った開発を行ったりすることは企業の立地戦略上、合理的な判断であり、他の先進諸国においても対外直接投資は拡大傾向にある。

