非正規雇用を取り巻く問題
13年の改正労働契約法、15年の改正労働者派遣法の施行により、非正規雇用として働く人に対して正規雇用への転換を含む雇用の安定を図る措置が講じられ、キャリアアップ助成金の拡充も行われているが、非正規雇用から正規雇用に移った人の割合は過去10年間で横ばい傾向にある。他方、昨今の人手不足を背景に、企業が非正規雇用を活用する理由にも変化がみられている。
厚生労働省「雇用の構造に関する実態調査」によれば、「正社員を確保できないため」とする事業所の割合が、2010年の18%から19年には38%まで上昇している。これに対し、「賃金の節約のため」を挙げたのは2003年の52%から19年の31%まで低下している。企業が経営環境の変化や新しい技術に柔軟に対応し、労働市場の中でより生産性の高い分野への労働移動が実現していくためには、正社員の解雇時のルールの見直し(解雇無効時の金銭救済制度の検討を含む)も課題の一つと考えられる。
求められるマッチング機能の強化
労働者の意識も日本型の長期雇用関係から変化の兆しもうかがえるが、転職行動には結びついていない。
25~64歳の正規雇用者のうち、転職希望がある人の割合を2015年と23年で比較すると年齢層を問わず小幅に高まっているが、実際に転職活動をしている人の割合は逆に低下し、雇用の流動化の進捗は緩やかである(図表)。
また、転職活動者が転職していない理由として最も多かったのは「自分に合った仕事がわからない」(14%)、次いで「思ったより手間がかかって進んでいない」(11%)であり、転職活動者や希望者に対して、求人や求職に関する官民の情報共有などを通じ労働市場のマッチング機能を強化し、一層の活躍の機会を提供する仕組み作りが求められている。

